
ムツは、硬骨魚綱スズキ目ムツ科に属する海水魚である。アカムツ、ハチジョウアカムツ、バラムツ、アブラソコムツなど、ムツとは分類が異なっていても、よく似た深海性の大型肉食魚の和名にムツが付く場合がある。また、ムツに似なくても、和名や地方名にムツが付く魚も多い。
ところが、正式なムツ科に属する魚は、全世界に1属4種しかいない。うち、日本近海に棲息しているのは、ムツとクロムツの2種だけだ。両者は外見が酷似しており、専門家でも見分けがつかないほどで、市場でも区別されることはほとんどなくホンムツとかクロムツと呼ばれ混同されている。
ムツの棲息域は、インド太平洋とアフリカ南部の大西洋で、日本では北海道以南から鳥島まで見られる。一方、クロムツは北海道以南から駿河湾、新島にかけての太平洋沿岸域と、ムツよりも北に偏っている。