入門者も楽しめるサヨリのノベ竿を使ったウキ釣り
堤防の釣りではさまざまな魚がターゲットになっているが、水温の低下する秋〜冬にかけてのシーズンに狙ってみたいのが「サヨリ」。その魚体は見た目に美しく、サンマ級の大型ともなると引きも最高だ。そしてさらに上品な食味も楽しめるとあって、堤防釣りではかなりの人気者になっている。ここでは、ビギナーでも比較的簡単に楽しめる「ノベ竿でのウキ釣り」を紹介していこう!
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堤防の釣りではさまざまな魚がターゲットになっているが、水温の低下する秋〜冬にかけてのシーズンに狙ってみたいのが「サヨリ」。その魚体は見た目に美しく、サンマ級の大型ともなると引きも最高だ。そしてさらに上品な食味も楽しめるとあって、堤防釣りではかなりの人気者になっている。ここでは、ビギナーでも比較的簡単に楽しめる「ノベ竿でのウキ釣り」を紹介していこう!
サヨリは全国の沿岸域に分布している魚で、一般に秋以降になると岸近くまで回遊してくる。このため、秋〜冬にかけての堤防がこの釣りのフィールドになる。ただし、地域によってはサヨリの産卵期となる春〜夏に釣れ盛ることもあるし、同じエリアでもその年の状況によって釣れるシーズンが変わるケースも珍しくない。さらに、サヨリは回遊魚なので、昨日までは釣れていたのに今日はさっぱり、ということもあり得る。
基本的にはサヨリ釣りで実績のある釣り場・シーズンに出かけるのが無難だが、とくに、ノベ竿で狙う場合は堤防ぎわまでサヨリが回遊してくることが絶対条件なので、どこの地域で釣りをするにしても情報収集が欠かせない。事前に、WEBや釣具店などの情報をチェックして、サヨリがノベ竿で釣れていることを確認してから出かけてみよう!
軽量で扱いやすい渓流竿や万能竿を使用する。長さは釣り場の規模に応じて4.5〜6mを使い分けるが、基本的には短めのほうが扱いやすいことは覚えておこう。
ベテランは自分なりの工夫を凝らして仕掛けを自作しているが、初心者は市販の完成仕掛けを活用するのがお勧めだ。
基本は、小粒のシモリウキを3〜4個ほど使ったシモリウキ仕掛け。この仕掛けのメリットは、サヨリの小さなアタリをキャッチしやすいこと。ハリは袖型タイプで、サイズは釣れるサヨリの大きさに応じて3〜5号を使い分ける。
これは、標準的なシモリウキ仕掛け。基本的にはオモリを使わずに表層を狙うが、近年ではサヨリが警戒している釣り場が増えているため、水面下50センチ前後を狙うほうがいいケースが少なくない。この場合は、脱着可能なゴム張りタイプのガン玉(2号前後)をミチイトかハリスに装着するといいだろう。水深1〜2mを狙う場合は、さらに重めのガン玉を装着してウキの浮力を調整する。
なお、サヨリの口は意外と硬いため、つねにハリ先の鋭いハリを使い続けることが大切だ。また、ハリスのチモト部分が擦れて白っぽくなってしまうとサヨリが警戒して食いが悪くなる。このため、ハリ・ハリスをマメに交換することが釣果に結びつくことを覚えておこう。
【コマセバケツ、ヒシャク】 コマセを入れるバケツとコマセを撒くヒシャクは、この釣りの必需品。バケツはフタ付きのものを選ぶと移動時に便利だ。
【水汲みバケツ】 コマセを薄めるための海水を汲み上げたり、汚れた手や堤防上を洗うために必要。ロープが付いたタイプが便利。
【クーラーボックス】 釣れたサヨリは、クーラーボックスで冷やして持ち帰るとおいしく食べられる。容量は10〜16リットル程度でOKだ。
【魚バサミ】 サヨリはウロコが剥がれやすく、素手で持つとウロコだらけになってしまうため、このような魚バサミを使うと快適だ。
【アミエビ】 サヨリ釣りの定番エサで、「食わせ用」としてパック販売されているものが使いやすい。ハリに付けるときは、尻尾の先からハリ先を入れて通し刺しにするのが基本だ。エサが大きめの時は、尻尾側を少し切り取ってできるだけ小さくハリに付けるとサヨリの食いがいい。ただし、頭(目玉)が取れてしまうと食いが悪くなるので、釣りの最中にマメにチェックして交換したい。
【ジャリメ】 サヨリの活性が高い時には、エサ持ちのいいジャリメを使うと釣果を伸ばせる。ハリに付けるときは、長さ1.5センチほどにカットしてから、通し刺しにするとよい。
【コマセ】 サヨリ釣りに使うコマセは、比重が軽く水面下に漂いながら広がるものが効果的だ。実際によく使われるのは、イワシのミンチやアミエビ。また、サヨリ釣り専用の配合エサ+アミエビの組み合わせもポピュラーだ。いずれも多めの海水で薄めて、その上澄みを足元に撒くことでサヨリを寄せるのが基本となる。
サヨリは水面直下を泳ぐため、水面をチェックしてみれば群れの姿を確認できることも多い。とくに、堤防の先端や岸壁のカドといった潮の通りやすい場所は、サヨリの群れが留まりやすく狙い目となる。ノベ竿で狙う場合は、外海の波の影響を受けにくい港内で、足場から水面までの距離が1〜1.5m程度の堤防が釣りやすいだろう。初めての釣り場にでかける場合は、とりあえず常連が釣りをしている場所に挨拶して近くに入れてもらうのが確実だ。
【ポイントにコマセを効かせる】
釣りをスタートする前に、まずはコマセを足元に撒いてサヨリの反応を見てみよう。すでに、近くでサヨリを釣っている人がいれば、ほどなく自分の前にもサヨリが回遊してくるはずだ。ただし、一度に大量のコマセを撒いてしまうとサヨリの群れがコマセの流れる方向へ遠ざかってしまったり、フグなどの他魚が集まってしまうことがあるので、ヒシャクに数杯ずつ撒くと良い。サヨリが集まってきたら、あとは断続的にコマセを撒いていこう。
【仕掛けの投入】
コマセを効かせた場所に、仕掛けを静かに投入する。ウキ下(一番下のウキからエサまでの長さ)は、50センチ前後に調整するのが基本だ。ただし、サヨリが警戒している時などは水深1〜2mの深場を回遊することも珍しくないので、その場合は状況に応じて徐々にウキ下を長くしていく。近くで釣れている人がいれば、その人のウキ下を参考にさせてもらうといいだろう。
仕掛けの投入後、アタリが出なければ仕掛けを断続的に引っ張って、付けエサに誘いを入れてみるのも有効だ。
【アタリのパターン】
サヨリの活性が高いときには、すべてのウキを一気に引き込む明確なアタリが出る。しかし、低活性時には一番下のウキだけがユラユラと動くような微妙なアタリも多い。また、潮の流れに対して個々のウキがなじんでいないと小さなアタリが出にくいため、ときどき軽く仕掛けを引いてなじませよう。この動きが誘いにもなって効果的なのだ。
【アワセ〜取り込みの方法】
ウキに何らかの動きがあれば、積極的にアワセを入れていく。ただし、激しいアワセはサヨリを驚かせるので、短いストロークで確実に竿を立てるだけでOKだ。サヨリが表層を泳いでいて、付けエサも海面下に見ている状況なら、サヨリがエサをくわえた瞬間にアワセを入れる「見釣り」も楽しめる。
アワセが決まってうまくハリ掛りしたら、そのまま竿を立てて抜き上げれば良い。
ダツ目の魚は、世界で5科38属190種が報告されており、うち、サヨリ科の魚は12属85種が知られている。日本では本種のサヨリをはじめ、センニンサヨリ、クルメサヨリ、ナンヨウサヨリ、ホシザヨリ、コモチサヨリなど6属13種が棲息している。
本種は、琉球列島と小笠原を除く、北海道南部から九州に分布している。
細身で流線形のサヨリは、群れを組み、水面下を矢のように走る。その動きと流麗な姿、そして脂肪が少ない淡白な身と美しさ。三拍子揃ったサヨリは、魚界の麗人、美人といわれている。
全長は最大で40㎝ほどで、同じダツ目のサンマとよく似たスマートな細長い体形をしている。下アゴのみが長く突き出しているのがサヨリ科一般の特徴で、この下アゴの先端部は紅をさしたように赤く、美しい色かどうかが鮮度のバロメーターにもなる。上アゴは平らで、上から見ると三角形をしている。
体色は、背部が銀青色で小さなウロコがあり、体側、腹部は銀白色に輝く。上からは海の青さ、下からは太陽光の色にうまく溶け込み、外敵から身を守る保護色となっている。筋肉は半透明で、腹膜は真っ黒。このことからサヨリは「見かけによらず腹黒い人」の代名詞とされることもあるが、これは筋肉が半透明の魚によく見られる現象で、腹腔内に光が透過するのを防ぐ適応と見られる。
サヨリは、海面すれすれを群れをなして泳ぎ、動物プランクトンを捕食したり、浮遊する海藻の断片を摂食したりする。稚魚や成魚は水面上を飛び跳ねる習性があり、危険が迫ると数回にわたり空中へジャンプし、外敵から逃げる。この習性は近縁のダツにもあり、さらに発達してトビウオ類の滑空飛躍となったと考えられている。
雄・雌とも、満1歳、体調20㎝前後で成熟しだす。地域によって前後するが、産卵期は4~7月で最盛期は5~6月前後。藻場、または流れ藻などのあるところへ十数尾ずつ群れを作って出現し、水面近く、ときには水面を覆う藻の上に体を横たえて産卵する。一回に産む卵の数は、1,000~2,000粒で計6,000~1万3,000粒になる。水温15℃なら約2週間で孵化し、6~8㎜の仔魚が誕生する。
孵化したばかりの仔魚は活発に泳ぎまわる。10日目で体長12㎜になって下アゴが伸びはじめ、25㎜までに成長すると変態は完了する。仔魚はプランクトンや小型甲殻類を食べ、その後はアジモ、甲殻類、水面に落下した昆虫などを食べて成長する。5月頃に生まれたものは、8月に14㎝、10月に18㎝、満1歳で25㎝、9月に30㎝になり、寿命は約2年である。
一般に、サヨリという名は、「沢(=岸辺)寄り」に多く集まる魚という意味から名付けられたとされている。
1932~1937年に大槻文彦らが著した国語辞書『大言海』では、「サは、狭長なるをいう。ヨリは、この魚の古名ヨリトのトの略」としている。また、ウロコが体側に縦列で106枚もあるという細鱗の持ち主であることから、細鱗(さいり)と呼んだという説もある。いずれも、体の形や群集性からの命名であろう。また、1709年に編纂された『大和本草(やまとほんぞう)』には、「サヨリ形小さくして円と長し、上のくとばし短く、下の嘴長がし」とある。これらのことから、サヨリは昔から知られ、親しまれてきた魚であることがわかる。
ダツ目の仲間にサンマがあるが、江戸時代中期以降にはサンマも「サヨリ」と呼ばれ、サンマをサヨリと偽って売られていた。これを区分するために、サヨリを「真サヨリ」と称したという。西日本ではいまでも、サンマを「サヨリ」と呼ぶところがあるという。
日本の至るところに棲息しているサヨリは、地方での呼び名がじつに多彩だ。東京都や神奈川県では、30㎝を超える大物をとくに「カンヌキ」と呼ぶが、これは両開きの扉の戸締まりに使う閂(かんぬき)に喩えたものである。その他、イトのように細長い魚ということから、北九州では「カンノンウオ」、糸きり、網きりの意で、糸や網が切られるほど大漁にとれるということから、和歌山県では「ヤマキリ」。叺(かます)を作るときに使う竹針を「カマス通し」と呼ぶことから、岩手県では「カマストシオ」と呼ばれている。その他、寄り集まる魚を意とする、兵庫県の「ヨロズ」、細長い体型、針魚を意とする新潟県の「ハリヨ」。ササ(=細小)の同義語のスズを意とする、能登・淡路・徳島県の「スズ」など、たくさんの地方名がある。
サヨリが一番美味しいシーズンは、産卵期前の春、そして荒食いをする秋。脂肪がほとんどないので、さっぱりとしていてヘルシー、緻密な肉質で大変美味だ。
透き通るような美しい色調もよいが、長い姿を活かした造り身の楽しみが味わえるサヨリ。糸造りなどの刺身はもちろんのこと、巻いたり、結んだりして吸い物の椀種、天ぷら、煮物などにするのもよい。立て塩で締めて鮨種、和え物にするもよし、サラダにも合う。生食の場合は、必ず皮を頭のほうから引くことを忘れずに。酢締めの場合は、締めてから皮を引くこと。
20㎝程度の小型サヨリは丸ごと揚げてしまうのが、一番簡単でおいしい。サヨリはワタをとって水洗いし、水気をふきとっておく。塩を振ってしばらくおいたあと、片栗粉をまぶして、油で揚げる。
串焼きもお勧め。サヨリは三枚におろして黒い腹膜をそぎ取り、塩を振る。ザルなどに乗せてしばらく干すか脱水シートに挟み、身を締めたら串に巻きつけてグリルなどでこんがり焼く。オリーブ油を塗って焼いてもよい。
串焼き
丸揚げ
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)