キュウセン【求仙、九線】

キュウセン【求仙、九線】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類スズキ目ベラ科キュウセン属
  • 学 名Halichoeres poecilopterus
  • 英 名Multicolorfin rainbowfish
  • 別 名ギザミ、スジベラ、クサビ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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ベラ科の仲間は暖海を好み、世界中の熱帯から温帯にかけて約500種が広く分布し、日本近海でも約130種が棲息する。
本種は、そのなかでも比較的低温に強い種類で、温帯域に分布できる数少ないベラの一種である。主な分布域は、北海道南部以南、南西諸島以外の日本各地、および東シナ海、南シナ海、朝鮮半島など。


特徴

体型は細長く側扁し、比較的大きな円鱗に覆われている。背ビレは、エラの後端周辺から尾ビレの付け根までと長い。突き出した口には牙顎歯や咽頭歯が発達し、硬いエサも食べられるようになっている。
雄は体長30㎝前後に成長し、体色は鮮やかな黄緑色。胸ビレの後方に、境界の不明瞭な大きな濃青色の斑がひとつあるのが特徴だ。
雌は体長約20㎝ほどで、体色は黄褐色。背面の中央と体側に黒くて太い縦線が入り、黒線の内外に点線状の赤い縦線がある。


性質

沿岸部、内湾の岩礁の点在する砂礫底や砂底に棲息する。昼行性で、海底付近や海藻の間を遊泳しながら甲殻類、貝類、多毛類などを捕食し、夜間は砂に潜って眠る。また、冬期に水温が13~15℃まで下がると砂に潜って冬眠し、春に再び15℃になると活動を再開する。
性転換はベラの仲間の特徴のひとつであるが、キュウセンも雌の一部が成長すると雄に性転換し、色合いが変化する。雌と雄の色形が非常に異なっているため、雌は「赤ベラ」、雄は「青ベラ」とも呼ばれ、別種と思われていたこともあった。
この性転換した雄を二次雄と呼び、二次雄は複数の雌と産卵活動を行う。ところが、最初から雄として生まれる個体もおり、こちらは一次雄と呼ばれる。そして、一次雄の姿形は、雌とまったく同じである。つまり、その外見だけでは雄と雌を判別できないことになる。
そこで現在の学術書では、一次雄のことをイニシャルフェイズ=Initial Phase(IP)、二次雄をターミナルフェイズ=Terminal Phase(TP)と表記するようになっている。この小型の一次雄は、雌と一緒になって大型の二次雄の縄張りの中で生活し、その産卵行動に紛れて自分の精子をかけて子孫を残すという行動も報告されている。
産卵期は6月下旬~9月頃で、地方によって差がある。砂地に雌が産卵床を作って産卵した後、雄が放精して卵を砂で覆う。孵化後、1年で体長約7㎝、2年で10㎝、3年で15㎝ほどに成長する。

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写真の「青ベラ」と呼ばれるキュウセンの雄は、そのすべてが体長9~15㎝程度に成長した雌が性転換した二次雄(Terminal Phase)である。

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写真中央を泳ぐキュウセンは「赤ベラ」などと呼ばれる。この赤ベラを雌だとしている図鑑も少なくないが、その見た目だけでは雌か一次雄かどうかの区別はできない。


文化・歴史

キュウセンという名は、雌の体側の縦線の数が9本あることに由来し、漢字でも「九線」と書く。また、「九仙」「求仙」などと書く場合もある。
関東では、ベラの仲間であるササノハベラやニシキベラなどと一緒に、単にベラと呼ばれることも多い。
瀬戸内地方では「ギザミ」と呼ぶことが多く、とくに雄を「青ギザミ」、雌を「赤ギザミ」と呼び分けることもある。また、その鮮やかな色合いが遊女の着物を連想させることから、愛知県などでは「オジョロ(お女郎)」と呼ばれる。
英名も、その鮮やかな体色からきたもので、意味は、multicolorfin=多色なヒレの、rainbowfish=虹色の魚、である。


釣り方

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瀬戸内エリアではキュウセンの沖釣りが盛んなほか、海釣り公園などの陸っぱりでもベラ釣り大会が開催されるほどの人気ターゲットである。一方の関東エリアでは、キュウセンの魚影は濃いものの専門に狙う人は少ない。
エリアによっては一年中狙えるが、水温の上昇している夏~秋が釣りやすい。また、キュウセンは夜に休眠する魚なので、時間帯としては日中メインのターゲットとなる。

【投げ釣り】

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投げ釣りの場合は、あまり根(岩)が多いポイントだと根掛かり(仕掛けが引っ掛る事)が多発してしまうため、砂地に根が点在したエリアが釣りやすい。
根まわりを攻めるので、ハリは1~2本程度と少なめにしておく。ハリの種類は、吸い込みのいいキツネ系(針の種類)のキスバリが基本。オモリは、根掛かりに備えて浮き上がりのいいジェットテンビンタイプを使うとよい。付けエサは、アオイソメやイワイソメなどを使用する。
ポイントに仕掛けを投げ入れたら、海底で仕掛けを誘い続けることがコツ。軽めのオモリを使って、仕掛けを潮流に乗せて流し釣りするのも効果的だ。

【沖釣り】

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遊漁船やボートから釣る場合、根ぎわ(岩礁帯の付近)を中心に攻めることと、仕掛け絡みを極力少なくする意味で、カワハギ仕掛けに準じた胴付き仕掛け(一番下にオモリを付ける仕掛)が使いやすい。西日本エリアの釣具店では、ベラ専用仕掛けとして販売している。竿もカワハギ竿が流用できるが、穂先の感度に優れるシロギス用もお勧めだ。
付けエサはイワイソメ(マムシ)やモエビなどの食いがいいが、アオイソメやオキアミなどを使う人も多い。
食い逃げを防ぐ意味でも、つねに誘いと聞きアワセ(魚が掛かっているか確認するため竿をあおる)を駆使しながら、小さなアタリをしっかりとキャッチしてみたい。


料理

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刺身

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ムニエル

関東地方でのキュウセンの評価は低いが、関西、とくに瀬戸内エリアではとても好まれている。瀬戸内海などの潮流の速い場所で育ったキュウセンは身が締まっておいしいことが、その大きな人気の理由のようだが、ほかの地方で釣れるものもおいしく食べられる。
キュウセンをおいしくいただくには、しっかりと下ごしらえすることが大切。前提として、釣ったらすぐに活き締めして冷えたクーラーボックスで持ち帰りたい。また、体表のヌメリを多めの塩で揉んで洗い流すと、包丁でさばくのが簡単になる。
旬は夏とされ、クセのない白身はさまざまな料理でおいしくいただける。大型のものは刺身や昆布締めが絶品。塩焼きや煮付け、天ぷら、唐揚げ、酒蒸し、ムニエルなどでも最高の味わいが楽しめる。
瀬戸内地方の郷土料理である「いびり食い」は、半干しにしたキュウセンを素焼きし、醤油とカボスをかけて食べるもの。身が締まってウマミも凝縮されて大変おいしい。また、焼いたものや揚げたものを南蛮漬けにした料理も好まれている。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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