衣と白身の食感の違いを楽しむスズキの変わり揚げ三種
ルアーフィッシングではキャッチ&リリースが一般的、食べること自体がいけないわけではない。釣れたなかから無駄なく食べられる分だけを持ち帰って、ぜひ、その美味しさを実感し、以前にも増して魚を大切にして欲しい。
スズキ本来の上品な味は、刺身はもちろん、ふっくらした食感の煮付けやフライでもおいしく、天ぷらの種としてもかなり上位にランクづけできる。
今回は、海外でポピュラーなフィッシュ&チップスをイメージした変わり揚げを作ってみよう。ポイントは味つけしないことと、薄力粉に上新粉を混ぜてサックリ仕上げること。衣にはカボチャの種やアーモンド、素麺を使い、カリッとした衣と、ふっくらした白身の食感の違いをより強調してみる。そのままでも塩を振ったり、好みのたれやソースを付けたりしてもおいしく食べられる。
衣を工夫すれば見た目も楽しい意外なほど簡単な変わり揚げ
[材料](4人分)
スズキ(40cm級) 1尾
薄力粉、上新粉 適量
水 適量
衣(かぼちゃの種、スライス
アーモンド、素麺など)適量
揚げ油 適量
下処理・作り方
スズキは、エラぶたにあるトゲや背ビレが鋭く危険なので、さばく際には、これらを先にはさみで切り落としておくと安全だ。
また、揚げ物をつくる際には、種を一度に入れすぎると油温が下がり、揚げ上がりがベタつくので、一度に入れる量は油面の3分の1程度にするとよい。
①スズキを三枚におろしたら、まずは腹骨をすき取る。写真のように包丁を逆刃(刃を上に向ける)にして、切っ先を使って切れ目を入れると簡単。
②切れ目を入れた部分から、あらためて包丁をいれ、腹骨に沿うように切り進める。身を縦に置いたほうが切りやすい。
③次に皮を引く。左手で皮の端をつまみ、これを引っ張りながら、まな板に押し付けるようにして包丁を進める。身をまな板の端に置くのがポイント。
④小骨を取り除くため、血合い部分をやや大胆に切り取る。包丁を少し傾けて、身のやや内側に向かって切るようにすると骨をきれいに取り除ける。
⑤柵取りした身を食べやすい大きさに切り分ける。断面が四角いスティック状にすることで、揚げたあとにふわっとした食感が楽しめる。
⑥水でややゆるめに溶いた薄力粉に、上新粉(うるち米の粉。団子など主に製菓用に使われる)を適量加えると、揚げ上がりがサックリする。
⑦今回用意した衣は、写真奥の左から、短く折った素麺、かぼちゃの種、スライスアーモンドの三種。ナッツ類は製菓用など、適度に塩味がついているものを使うと手軽。カリッとした食感を楽しめるものなら、あられや刻み湯葉、ゴマなどでも良い。
⑧⑤を⑥にくぐらせたのち、用意した衣を付け、170度程度の油で揚げる。衣が焦げやすいので、温度の上がり過ぎ、揚げ過ぎに注意しよう。油の泡が小さくなり、衣がカリッとすれば揚げ上がり。
スズキのつみれの揚げ浸し
揚げ浸しとは、材料を油で揚げたのち、漬け汁に浸して味を含ませる料理法です。今回は、スズキの身に釜揚げシラスを加えたつみれを作り、これを揚げ浸しにする。
①下処理したスズキの身(変わり揚げの際に取り除いた血合い骨の部分を加えてもよい)は、賽の目に切ったのち、細くなるまで出刃包丁で叩く。粘りが出てきたらシラスを加え、これを混ぜ込むようにさらに叩く。
②魚が新鮮なら、よく叩けばつなぎは不要。シラスのかすかな塩味があるため、下味も必要ない。 叩き終わったら、余分な空気を抜きつつ、ひと口大にまとめる。これを、変わり揚げで使った水溶き粉にくぐらせて油で揚げるが、衣をつけずに素揚げにしてもOK。 鬼おろしで粗めにすった大根おろしに市販のめんつゆを合わせみぞれ風の漬け汁を用意し、これを揚げたてのつみれにかければ出来上がり。ゆでた季節の青菜を添えれば、色合いも鮮やかな一品となる。
【料理監修:森山 利也】
千葉県富津市で居酒屋「はいから屋」を25年営み、現在は築地場外市場で曜日限定の店「JOJO BAR」をプロデュース。自ら店に立ち旬の魚や自家製の野菜など、新鮮な食材を使った様々なメニューを楽しめる。
そして包丁捌きの基本や海に関わることを学べるリアル「森山塾」も主宰。
また、ベテランの釣り人として各方面で活躍し、豊富な経験と見識を持つ。
上記は森山氏がビギナーにも無理なく作れるものとして紹介していただいたおすすめ料理だ。
【協力:株式会社 舵社】
参考本:スクラップブック of 釣果料理
http://www.kazi.co.jp/public/book/bk04/5126.html
4人の達人が贈る、全38魚種、144種のレシピを掲載
『ボート倶楽部』の連載や特集記事の中から、さと丸、森山塾長、Mr.ツリック、ウエカツ水産の4人が書いた釣果料理の記事だけを厳選&抜粋して集めた単行本。
釣った魚をおいしく食べる達人たちのおすすめ料理を作れば、みなさんの家の食卓が豊かになること間違いなし。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)