上品な白身のうまさを堪能
釣りの世界ではシーバスと呼ぶが、食材としてはやはり、スズキと呼びたい。
スズキと日本人の関わりは深く、多くの貝塚からその骨が出土しているほか、古事記にもスズキに関する記述が多数みられるということだ。
一時期、公害で汚染された魚の代表のように扱われたスズキだが、実はマダイ以上に神事に欠かせず、上品な味は貴族、庶民を問わず人々を魅了してきた。
本当は高級魚の代表、それがスズキなのである。
そんなおめでたい魚なら、やはり「尾頭付き」でいただきたいもの。
そこで今回は、食卓が華やかになること間違いなしのスズキの塩釜焼きをご紹介しよう。
簡単に見栄えよくできる上、おいしさも保証付き。クセのない上品な白身を再確認してみてはいかがだろう。
ちなみに、冬のスズキ釣りでは大型ねらいがメインとなるが、家庭で料理して食べるには、小型のセイゴクラスで十分だ。
●材料/4人分
スズキ(40センチ級)・・・・・1尾
塩・・・・・・・・・・・・・適量
卵白・・・・・・・Mサイズ4個分
さばき方と「スズキの塩釜焼き」の作り方
①スズキは、エラ蓋の部分に2か所の鋭いトゲがある。背ビレも手に刺さりやすいので、これらに注意しながらさばいていこう。
②今回の料理は、いずれも尾と頭を落とさずに(中骨をつなげたまま)下処理する。塩釜焼きは、ウロコを取り、エラと内臓を抜いたら完了。から揚げにするほうは三枚におろす。
③適量の塩をボウルに入れ、卵白を混ぜながら、適度な粘り気が出てくるまで混ぜ合わせる。
④焼き網にアルミホイルを巻きつけるなどして台を作り、その上に③の塩と下処理したスズキを乗せ、さらに③の塩を盛ってスズキを包み込む。台よりも魚が大きい場合は尾を落としても構わない。
⑤スズキ全体を塩で覆ったら、竹串などで魚の形(輪郭、目、エラ蓋、ウロコ、ヒレ)を描く。遊び心を生かして楽しもう。
⑥オーブンなどに入れ、180度程度の温度でじっくり焼き上げる。焼き時間は30分程度を目安に、焼き色を見ながら確認しよう。
⑦焼き上がりの色の目安はこのとおり。全体がきつね色になり、⑤で描いた魚の形がわかるようになればOK.
⑧木槌や出刃包丁の背などで軽く叩き、できるだけきれいに塩釜を外す。④の段階で魚の外周に沿って潮の厚みを減らしておくと、きれいに外せる。
スズキの旬は夏といわれ、落ちスズキはかならずしも脂の乗りがいいとは言えないが、塩釜焼きにすると、蒸し焼きの効果でジューシーなおいしさが味わえる。マダイで作ることが多いこの料理は、適当な大きさの白身魚であれば、幅広く応用も可能だ。
【料理監修:森山 利也】
千葉県富津市で居酒屋「はいから屋」を25年営み、現在は築地場外市場で曜日限定の店「JOJO BAR」をプロデュース。自ら店に立ち旬の魚や自家製の野菜など、新鮮な食材を使った様々なメニューを楽しめる。
そして包丁捌きの基本や海に関わることを学べるリアル「森山塾」も主宰。
また、ベテランの釣り人として各方面で活躍し、豊富な経験と見識を持つ。
上記は森山氏がビギナーにも無理なく作れるものとして紹介していただいたおすすめ料理だ。
【協力:株式会社 舵社】
参考本:スクラップブック of 釣果料理
http://www.kazi.co.jp/public/book/bk04/5126.html
4人の達人が贈る、全38魚種、144種のレシピを掲載
『ボート倶楽部』の連載や特集記事の中から、さと丸、森山塾長、Mr.ツリック、ウエカツ水産の4人が書いた釣果料理の記事だけを厳選&抜粋して集めた単行本。
釣った魚をおいしく食べる達人たちのおすすめ料理を作れば、みなさんの家の食卓が豊かになること間違いなし。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)