キントキダイ科は、キントキダイ属、クルマダイ属、ゴマヒレキントキ属、チカメキントキ属の4属18種で構成され、そのほとんどが食用となる水産上の重要な種類である。日本産の本科魚類は4属9種が知られており、本種のチカメキントキのほか、キントキダイ、ホウセキキントキが主に釣りの対象となっている。
本種は、太平洋、インド洋、大西洋などの世界中の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する。
チカメキントキ【近目金時】
- 分 類スズキ目キントキダイ科チカメキントキ属
- 学 名Cookeolus boops
- 英 名Longfinned bullseye, Bigeye
- 別 名カゲキヨ、カネヒラ、アカメ、イーキブヤー
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
体は左右に平たく、卵形をしており、体長が体高の2倍、またはこれよりも大きい。背ビレの棘は後方ほど長い。腹ビレは折り畳むと、その後端が尻ビレ基部よりも後方に達する。腹ビレの鰭膜(きまく)が黒いのも本種の特徴だ。
ちなみに、姿形が酷似しているキントキダイは、背・尻ビレ軟条部、腹ビレに黄色斑紋が散在していることで区別できる。また、尻ビレの後縁がわずかに凸型をしている本種と異なり、キントキダイはほぼ直線の截状(せつじよう)である。
体色は淡紅色で、エラブタの上部は赤く縁どられる。新鮮なものは体側に走る黄色い縦縞の間に青い斑点が並び、非常に美しい。体はザラザラとした硬く細かいウロコに覆われており、各ヒレの条が丈夫で、ヒレの付け根部分にはウロコをもつ突起が並んでいる。体長は最大で60㎝に達する。
金色に輝く大きな眼が印象的な本種だが、これはタペータムという輝板が網膜に入っているためである。輝板は、網膜を通過した光を反射させて明るさを増幅させる組織であり、ネコ科などの夜行性の動物にも備わっているものだ。本種が棲息する海域は、やや深くて暗いため、このような組織が発達したものと推測できる。
日本では、新潟以南、相模湾以南の水深100m以深の岩礁域、珊瑚礁域に棲息している。棲息水深は大型の個体ほど深く、海底から数m~10mほど離れた層を群れで遊泳している。夜行性で、主に甲殻類やアミ類、軟体類などを捕食する。産卵期は、7~8月と考えられている。
本種は目がよい魚であることが知られている。1957年、日本水産学会名誉会員であり名古屋大学名誉教授であった田村保博士は、網膜の錐体密度から、さまざまな魚の視力を計算したが、その結果、マハタ:0.24、チカメキントキ:0.17、マダイ・キチヌ・ウマヅラハギ:0.16、チダイ・ホウボウ:0.15、クロダイ・クサフグ:0.14、メジナ・マサバ・ワキヤハタ:0.13というように、主要な釣魚と比較しても優れていることが分かっている。
東伊豆や外房方面などでは、本種を「カゲキヨ」と呼ぶ。これは、歌舞伎「景清」の舞台装束の赤に似ていることに由来するといわれている。また、関西、和歌山方面ではキントキダイを「カゲキヨ」と呼ぶなど、両種を混同する地方が多く、さらに、キンメダイと混同して両種を「キンメ」と呼ぶ地方もあり、非常に紛らわしい。なお、標準和名の「近目金時(チカメキントキ)」は、魚類学者の田中茂穂博士によってつけられた。
船釣りで狙うのが一般的。南房総や東伊豆では季節によって主対象魚となるが、キントキ五目船や根魚五目船で狙うケースが多い。決して遊泳力に優れている魚ではないが、ハリ掛かり後のファイトはなかなかのもの。群れに当たれば次々とヒット(魚が針に掛かる)し、初心者でも比較的簡単に釣ることができる。
【船釣り】
本種の生活圏は底~中層なので、船釣りの場合は胴付き仕掛けにするのが合理的だ。付けエサは、イカやサバなどの切り身をチョン掛けにする。フラッシャーサビキを使用する船宿もあるので、事前に確認しておくとよいだろう。また、食い渋りぎみのときには、テンビン仕掛けが有効となる場合がある。
釣り方は、たとえば船長の指示ダナ(魚が泳いでいる層)が海底から3~6m付近であれば、いったん仕掛けを沈めて上へ上へと探っていく。アタリ(魚が食付いた信号)は、仕掛けが落ち込む途中でライン(釣り糸)が止まったり、食い上げで竿が(まっすぐに)伸びたり、タナ(魚が泳いでいる層)で待つ間に竿が絞り込まれたりとさまざまだ。
【ルアー釣り】
近年、注目を集めているのが、スローピッチジャーク・ジギング。タックルは、6~7フィートの専用ロッドが望ましいが、ライトクラスのジギングロッドでも代用できる。PE0.8~1号のメインラインに、フロロカーボン20~30ポンドのリーダーを3m前後接続する。
ジグは、スローピッチジャーク・ジギング専用がお勧めだが、なければできるだけ扁平なものを選ぼう。重さは、水深や潮流にもよるが120g前後が標準。グロー(夜光)系のカラーに実績が高い。
釣り方は、指示ダナの上下10mの範囲をリールを半回転ずつ巻きながらじっくり探るのが基本。アタリはフォール中(落ちていく途中)に出ることも多い。アタリ(魚が食付いた信号)があればライン(釣り糸)が止まるので、間髪入れずアワセ(魚の口に針を掛ける)を入れよう。
チカメキントキの旬は秋~冬とされていて、脂は少ないが上品なウマミがある。硬く締まった身質なので、刺身は薄造りがよい。ウロコが取りづらいので、おろす際はウロコごと皮を引き、皮は唐揚げにすると美味。そのほか、上質な白身は塩焼きや煮付けなどさまざまな料理に向く。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)