マダイのタイラバ入門(船釣り)

マダイのタイラバ入門(船釣り)
  • 分 類スズキ目タイ科マダイ属
  • 学 名Pagrus major
  • 英 名Red Seabream
  • 別 名ホンダイ、オオダイ、チャリコ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

釣り方

タイラバとは

タイラバもしくはタイカブラと呼ばれるこの釣り具は、もともとマダイ釣りの漁師が使う道具が進化したものだ。
 オモリ付きのハリにエビを付けて使用されていたが、一部の地域でエサの代わりに、ビニールやラバーを使用してマダイを狙うようになり、これが進化して今日のタイラバとなった。
 今や海のルアーとして欠かせない存在のタイラバであるが、ルアーとしての歴史は浅く、今もなお進化の途中だ。
 釣れる理由、メソッドには諸説あり、それが商品開発やテクニックに広く反映され、さまざまなバリエーションが展開されているのが面白いところでもある。
 もともとはマダイ用の漁具であるが、タイラバで釣れる魚の種類は多く、ボトムから表層近くまで、根魚から青物までと広範囲・多魚種で効果を発揮するルアーでもある。
 釣り方の基本は海底まで沈めて巻き上げるだけ。多くの場合は向こうアワセで魚が掛かるのを待ってからのやり取りになるので、特別な技術を持っていない初心者にとっても、始めやすい釣りである。突き詰めればテクニックがあるのだが、とりあえず巻くだけで釣りになるのが特徴だ。
 タックルや仕掛けがシンプルで扱いやすいうえに操作が簡単。操作しながら底取りや潮流への対応など船釣りの基本テクニックを覚えることができるので、ルアーに限らず、海の船釣りを覚えるためのファーストステップとしても最適な釣りといえる。
 タイラバには、アタリがあってもフッキングしにくく、フッキングしてもバレやすいといった弱点があった。仕掛け、タックル、テクニックが進化するにつれ目立たなくなったが、対処を怠ると千載一遇のチャンスを逃すことにもなりかねないので注意が必要だ。
甲殻類、タコやイカ、イワシやアジといった小魚、捕食が容易で栄養満点の環虫類。マダイが何に見えているのか分からないが、そのシルエットや動きから連想される海の生き物は多い。

タックル

海底から一定のレンジまで仕掛けの上げ下げを頻繁に行うため、巻き上げ力の強いベイトタックルを使用するのが一般的だが、スピニングタックルを使用しても問題ない。
 専用品が多く出回っているのでその中から選択するのが基本だが、ライトジギング用のタックルや、ブラックバス用タックルの流用も可能。しかしソルト対応品でない場合はサビに弱いので注意すること。特にリールには気を配ること。
 ランカークラスのマダイとのやり取りはもちろん、思いがけない大物との出会いも想定して、パワーにはある程度の余裕もほしいところだ。取り込みに手間取って他の釣り人に迷惑をかけないようにある程度のパワーがあるものを選んでおくことはマナーでもある。

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【リール】
使用するラインが150m以上巻けるベイトタイプを選択するのが一般的。ブラックバス用のリールなども使用可能だが、流用する場合は、海水での使用が可能なものであることを確認しておこう。
 ベイトリールが選ばれる理由は、一定のスピードで仕掛けを巻きとりやすく、巻き上げが楽にできるパワーを持っているからだ。1日中フォールと巻き取りを繰り返すことを考えるとこのタイプのリールが使いやすい。
 誘いの早さや手返しの良さがこの釣りにとって重要なので、ハンドル1回転で60~80㎝のラインが巻き取れるものを選択する。ギア比5:8以上が望ましく、巻き取り抵抗の大きさが気にならなければギア比6:3前後のハイギアタイプをおすすめする。
 ドラグは微調整が効き、滑り出しが滑らかなものが理想。滑らかなドラグは急激な衝撃からラインやタックルを守ってくれるだけではなく、マダイ特有の激しい首振りの衝撃を和らげてくれるので、バラシの軽減にもつながる。
 さらに、バイトの瞬間にラインを適度に送り出すことで、魚に与える違和感を減らせ、ファーストバイトでフッキングしなかったときの追い食いも期待できる。その際、スムーズなリーリングを長く続けることもできるのでフッキングの確率をさらに上げられる。
 リールの最大ドラグ力は4㎏は欲しいところ。ドラグの設定については、使用するリーダーラインの強度の1/3~1/4の重さ、もしくは、1~1.5㎏の負荷が掛かったところで滑りだすようにしておけばいいだろう。

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メカニカルブレーキは、スプールを指で動かしたときに、ぐらつかない程度まで締め込む。締めすぎはフォール速度が遅くなるので注意。

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黒い星型のレバーがドラグ調節用で、銀色の丸型がメカニカルブレーキ調節用。

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竿先を下げグリップを脇に挟むのが基本のフォーム。竿先を下げることで、巻き抵抗が軽減され、グリップを脇に挟むことで、手首と腕が楽になる。長時間テンションが保てるように、なるべく楽な態勢をとるようにしよう。

【ロッド】
マダイの口にハリ先が触れたとき、弾かずに口元に引っ掛けておけるしなやかな穂先と、いざフッキングとなれば魚の口にハリを突き通すのに必要なブランクの反発力、そしてやり取りの際に大物マダイを浮かせるだけのバットパワーが求められる。
 また、マダイ特有の首を左右に激しく振る動きをうまくいなしてバラシを減らしてくれるしなやかさも欲しいところだ。
 バラさないという点では、長くて柔らかいロッドが有利なのだが、船の上での取り回しを考えると、2m前後のものが扱いやすい。
 操作性に目を向けると、グリップの長さも重要だ。リーリングをしたときにグリップエンドを脇に挟めるくらいの長さが理想で、こうすることでティップがブレない安定したリーリングと、大物とのやり取りの際の踏ん張りが効くことになる。
 巻き取り抵抗も含めると、ロッドに掛かる重量はアングラーにとってかなりの負担になる。1日釣りを続けることを考えてもグリップを脇に挟んでリーリングできるものを選んでおくほうが無難。
 ガイドについては、PEラインを使うことを前提に選ぶ必要がある。まずガイドリングはSiCであること。摩擦と摩擦熱でPEラインもガイドも傷みやすいのでこの部分にはこだわっておこう。特にバスロッドを流用する場合はゴールドサーメットのガイドが装着されていることがあるので注意すること。
 ガイドフレームの素材についてはステンレス以上の物ならば大丈夫。できればPEラインが絡みにくいデザインの物を選ぼう。

メインライン

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一定の長さで色分けされた船用のラインを使えば、水深やラインの入り方などの情報が掴みやすい。

40~80gという軽い仕掛けを使うこの釣りは、潮流の影響を受けやすい。それを少しでも減らすために0.6~1号の細いPEラインがメインラインとして使用される。船釣り用のものなら、水深が分かりやすいようラインが色分けされているので使いやすい。
 ラインは、海中でなるべく直線状態であることが望ましい。伸びの少ないPEラインを使用している限り、仕掛けが少々遠くに流されてもラインが直線状態であれば、着底やアタリを捉えることは難しいことではない。ところが仕掛けが潮流の影響を受けて膨らんでしまうと、その感度は極端に鈍くなってしまう。
 一度このような状態になるとラインはさらに流れの影響を受けやすくなり、より大きく膨らんでいく。結果、アタリはおろか着底の感覚まで掴めなくなってしまう。
 着底の感覚が分からないのはこの釣りにとって致命的なことだ。タイラバが底に着いたままズルズルと引きずられていたのでは根掛かりによる仕掛けのロストが頻発してしまう。
運よく根掛かりしなかったとしても、しばらく底を引きずられていたタイラバはマダイに見切られてしまう。どちらの場合も釣果は望めない。
 潮流で仕掛けが流されること自体はさほど問題ではないが、ラインが膨らんで感度が鈍るのはいいことではない。そのためにもなるべく抵抗の少ない細いラインを選択するようにしたい。

リーダーライン

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リーダーラインは素材が同じであれば流用も可能だ。

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タイラバのリーダーは傷みやすいので頻繁にチェック。人差し指でリーダーをつまんで滑らせると、痛んだ部分が引っ掛かるのでそこをカットして結びな直そう。魚を釣り上げた後、根掛かりしそうになったときはもちろんだが、フグやベラが多い場所ではアタリのあるたびにラインチェックが必要なこともある。

細いPEラインをメインラインとして使用するこの釣りでは、リーダーラインの存在は欠かせない。一般的には2.5~4号のフロロカーボンもしくはナイロンラインを使用することが多い。
 メインラインに対して太すぎるリーダーを選ぶのもよくない。メインラインとリーダーの太さのバランスが悪いと、安定した結節ができないばかりかその部分がガイドに当たってラインが傷つきやすくなる。結果期待した強度は得られないことになる。
 太すぎるリーダーは、魚の食いにも影響する。太さの目安はPEラインの3~4倍の号数のリーダーを使用すると覚えておけばいいだろう。
 リーダーの長さは、1.5~2mが標準。少し長めにとっておいて傷んだ部分をカットしながら使い、海底がなだらかなら釣れる魚の長さプラス20㎝ほどになったら結び直すくらいでいいだろう。
 対して、根が荒い場所で釣るときはリーダーを長めにとるようにすることも忘れてはいけない。何度か仕掛けを上げ下げするうちに、根ズレなどでリーダーに傷がつく。傷の入る位置がメインラインから1m以内なら最初に取るリーダーの長さは2mは必要だ。

基本の操作

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タイラバの基本操作は、いったん仕掛けを底まで落とし、一定の位置まで巻き上げたら再び底まで落とすという、簡単な操作の繰り返しだ。
 他のルアーフィッシングのようにアクションを加えることもないので、釣りの経験が少なくても親しみやすいのが特徴だ。

【フォール】
フォールは、タイラバを海に入れた状態からスタート。落とし込む前にフックやネクタイの絡みがないか、上から確認すること。乱暴に落とし込むのは絡みのもと。キャストのときは着水前のサミングが有効。
リールのクラッチを切り、スプールを親指で押さえた状態でタイラバを少しだけ水中に沈める。この状態でフックやネクタイの絡みがないことを確認してからスプールを押さえた親指を離すとタイラバが沈み始める。
 着水のショックで、ネクタイとフックが絡んだりしないよう、タイラバの入水はなるべく静かに行うのがポイントだ。
 フォールを始めたら、ラインを止めたりせず一気に底まで落とし込む。途中で止めると潮流で仕掛けが流されてしまい、狙った場所に仕掛けを届けられないばかりかオマツリの原因になったり、ラインが大きく膨らむことで着底やアタリが分かりにくくなってしまうからだ。
 沈み始めたら回転するスプールを軽く親指で押さえる(サミング)しておくと、着底の瞬間の糸フケが少なく操作性が向上する。糸の出が止まった瞬間にスプールの回転が止まるのでフォール中のアタリも分かりやすくなる。
 サミングはフォールの速度が遅くならないよう、スプールに親指が触れるか触れないか程度で止めておくのが肝心だ。

【着底の判断】
フォール中、ラインの放出が止まるのが着底した合図になる。PEラインを使用していれば、ラインの伸びはほとんどないので、アタリとともに着底の感覚も掴みやすいはずなのだが、これが分からずに苦戦することも多い。
 一番の理由は船が絶えず移動していることにある。海上では止まっているように見える船でも、潮流や風の影響で結構な早さで移動している。
 潮が止まっていない限り仕掛けは常に流されるのが普通。仕掛けが船の下に真っ直ぐに沈むことはほとんどない。
 風の影響も潮の流れもないプールのような状態なら、仕掛けが着底したと同時にスプールの回転が止まりラインが出て行くこともないので、回転停止が着底の合図になるのだが、船が移動しラインが潮流の抵抗を受けて流されている状態では、仕掛けが底で一旦止まっても、その後の船の移動や潮流の影響で再びラインが引き出されることになる。これが着底の判断を鈍らせる要因だ。
 一連のスプールの動きは、フォールでラインが引き出されながら回転し着底の瞬間に一瞬だけ止まる。直後、船が移動したり海中の潮の流れでラインが引っ張られたりすることでラインが引き出され回転を再び始める。船の移動速度や海中の潮の流れが速いほど、着底を判断するタイミングは短くなる。
 タイラバが着底したことが分かりにくいときの一番の対処法は、仕掛けの重量を重くすること。フォールスピードが速く、ラインもより真っ直ぐな状態で引き出されるため感度も上がる。
 ただし魚がくわえたときの違和感やフッキングした後のバラしやすさを考えると、着底が分かる重さの中で、一番軽いウエイトを選ぶことが必要だ。
 フォールのときに仕掛けを潮上にキャストするという方法もある。仕掛けの着底が船の真下に近いほど、余分なラインの放出が少ないため着底の判断もしやすい。
 先の項目に登場したサミングも有効。サミングなしでは着底の瞬間も慣性でスプールが回り続けるのでそれを防ぐためだ。流れが速いとスプールが止まる時間が一瞬しかない。サミングはその瞬間を分かりやすくしてくれる。
 そのほか、ラインを細くして潮流の抵抗を減らしたり、おおよその水深を船長に訪ねて、ラインのマーカーを頼りに水深を把握したりという方法も有効だ。

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パラシュートアンカーを使って船の動きと潮流を同調させると仕掛けが真っ直ぐに落とせる。

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釣り人は真下に落としていると感じても実際は船が移動しており、広範囲を探れるのでチャンスが多い。潮が流れているときにアタリが多い理由の一つだ。

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船の動きと潮流が合っていないと、ラインが膨らんで着底やあたりが分かりにくい。潮流と風が反対に向いているときなどに起こりやすい現象だ。

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仕掛けはどんどん流されるので、回収までにできる誘いの回数も少なくない。

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仕掛けが流されるときは、無理に軽いタイラバを使う必要はない。重いタイラバを使うことで、仕掛けが流されたりラインが膨らむのを抑えるほうが効率がいい。

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軽い仕掛けを使いたいときは、潮上にキャストして船の真下で着底させるといい。速すぎる潮流に対応できる重さのタイラバがないときには有効な作戦だ。

巻き上げ

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巻き上げは、ハンドルの回転で竿先がぶれないよう、手首を柔らかく使うのがコツ。

先の項目で説明したとおり、着底のサインはごく短いことが多い。スプールの回転の変化や糸フケの出方に注意しながら、着底のサインが現れたらすぐに巻き上げを開始する。ここでのんびりしていると、根掛かりなどのトラブルに見舞われたり、マダイに見切られてしまうのでスムーズな操作が期待されるところだ。

【巻き上げの速度】
巻き上げの速度には、これといった決まりがあるわけではないが、何かの基準が欲しいのであればフォールのスピードを目安にしてみてはどうだろうか。フォールの際にラインに付いているマーカーを見てそのスピードと同じ速さで巻き上げるように意識してリーリングをしてみよう。
 フォールの速度に合わせた場合早巻きになることが多いので、アタリがなければ少しずつ巻きスピードを緩める。ハンドル1回転/2秒あたりまでのスローリトリーブは使用頻度も高い。もちろんさらに遅くとか早く巻くことが有効な場合もある。むしろ肝心なのは、釣れなかった場合に同じ速度で巻き続けないことだ。
 巻きスピードに変化を加える場合、早巻きから徐々に遅くしていったほうが、手返しもテンポもいいので釣りやすい。まずは活性の高い魚に数多くアピールし、反応が鈍いときにじっくり攻めるほうがバイトの効率もいいのだ。

【巻き上げはどこまで?】
着底後、いちいち仕掛けを水面まで巻き上げていたのでは効率が悪い。仕掛けをある程度巻き上げたところで再び着底させて狙うべき場所を効率よく攻めるのは、タイラバのセオリーでもある。
 ではいったいどこまで巻き上げればいいのだろうか。一般的に言われるのは海底から10~15m。リールのハンドルの回転数にして15~25回転ほどだ。あくまでもこれは目安であるので、その日の状況に合わせるのが当然必要となる。

ベイトのいるレンジと誘いの範囲

イワシなどの小魚がベイトのとき、マダイはベイトがいるレンジの少し下側に待機し、弱ったベイトが群れから外れるのを待っている。
 元気がよく捕まえにくいベイトは群れの中心より上、かつ、群れの先頭近くを泳いでおり、群れの後方や下方には群れの動きに付いていけない体力のないものが集まるためだろうと考えられる。
 捕食しやすい弱ったベイトを効率よく捕えるための最適なポジションにマダイは位置しているのだ。
 この点からタイラバの巻き上げは底から何mではなく、ベイトがいるレンジの最下層もしくはその少し上までがいいということが分かる。これを意識していればマダイがベイトを追って浮いているときでもチャンスを逃すことが少なくなる。

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マダイの反応

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マダイが積極的にタイラバにアタックしてくるときは、そのレンジが底から何mだったのか、具体的にはリールを何回巻いたところでアタリが多いのかを覚えておき、その層の少し上までリーリングを続けると良い。
 同じレンジで何度もアタリがある場合は、マダイがタイラバをエサとして認識している、つまり見切られていない状態なのでそのレンジを集中して狙うことだ。
 問題なのは、魚群探知機にマダイらしき反応があるのに、アタリがなかったり、急にアタリがなくなったりした場合だ。この原因はタイラバが見切られた状態であるとも考えられる。
 マダイにはある程度の学習能力があるようで、同じタイラバが視界(もしくは側線などから感じられる波動を感じる範囲)から消えない限り、見切ったタイラバがエサではないという記憶を維持しているのではないかという説がある。
 この状態でマダイをバイトに持ち込むのは容易なことではない。そこで、この説に従えば、一度マダイが感知できる範囲からタイラバを消し去ることが必要になる。通常巻き上げる範囲よりさらに上まで、もしくはいったん仕掛けを回収してから再投入するのが有効な手段ということだ。
 マダイが感知できる範囲は、水の透明度や釣り場の明るさ、潮流の強さによっても違いが出るだろうから、透明度が高い場合や天気がいい日、潮流が穏やかな場合は巻き上げの範囲を大きくすることが望ましい。
 こう考えると、認識しやすい派手なカラーよりもナチュラルカラーのほうがマダイの視界から速く消えるだろうから、食いが渋いときに地味目のカラーがいいというのも納得ができる。

アタリとフック

アタリは巻き上げのときに感じることが多い。突然ドカンときてティップを水面に持っていかれたり、ガツガツという前アタリの後にグンと重さが乗ったり、この釣りの楽しみのひとつがこの瞬間だということは間違いない。
 巻き上げのときにアタリが多いというのは、マダイが巻き上げのアクションに反応しやすいのもあるかもしれないが、フォールと巻き上げでは圧倒的に巻き上げのほうが、アタリが分かりやすいからではないかとも考えられる。
 フォールでマダイのアタックがあった場合は、瞬間的にラインテンションが抜けるだけなので釣り人が感知するのは難しい。ラインにテンションが掛かっていない状態では、フックがマダイの口に刺さる可能性もかなり低い。対して巻き上げのときはラインにテンションが掛かっているので、マダイのアタックを判断することは容易だ。そのときハリ先がどこかに軽くでも引っ掛かってくれればしめたもの。その状態でテンションを保ち続けていれば、マダイの動きでハリ先が食いこみフッキングに持ち込める確率はアップする。たとえフッキングに至らなくても、ハリ先がマダイに触れて引っ掛かった状態になるということは、アタリとして感知しやすくなるということなのだ。
 フォールにせよ巻き上げにせよ釣り人が感知できないレベルのアタリは多い。そのアタリを少しでも多く感じるためには、まず、触れただけで引っ掛かるようなシャープなハリ先を持ったフックを使用することをおすすめする。

着底直後のアタリ

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巻き上げの中でも着底直後のアタリが多い。これは着底した瞬間のリアクションバイトが多いからというだけではなく、着底直前にはすでにタイラバをくわえていて、それが巻き上げのテンションが掛かったときに釣り人に伝わるからというのもあるようだ。どちらにせよ着底直後はチャンスが多いので着底後は速やかに巻き上げを開始しよう。

フォールのアタリ

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フォールのアタリではガツガツと前アタリがくることはまずない。多くはラインの放出が止まったあと、おかしいなと思っているとグンと持っていかれるといったパターンだ。ただしこれは運よくフッキングに至った場合で、おかしいなと思った後、そのまま外れてフォールしていくのがほとんどだろう。このアタリを確実に取ることは難しいが、スプールの回転がおかしいと思ったときにアワセを入れることでフッキングに持ち込めることも多い。
 その際、瞬時にアワセを入れるためにクラッチを入れず、スプールを指で押さえてラインにテンションをかけ、魚らしき重みが伝わったらラインを巻き取りながら竿先を下げたのちに、バット部分に重さを乗せトルクのあるアワセを入れてみよう。
 タイラバではアワセを入れないのがセオリーとされているが、それは主に巻き上げのときのこと。
 ラインの沈みが止まるようなフォール中の小さなアタリを取ったときや、着底直後の巻き上げの瞬間にいつもと違った重さを感じたときは、瞬時にアワせることでマダイに引っ掛かった状態のハリをフッキングに持ち込める可能性が上がる。
 特に着底直後は神経を集中して、小さなアタリにも即対応できるように心構えを持っておこう。

タイラバのパーツ

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同重量の鉛(上)とタングステン(下)のサイズ比較。

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重量=ヘッドサイズ比較となるので、アピール力も考えながら重量を決めよう。

【ヘッド】
仕掛けを沈めるウエイトとしての役割に加え、水流を受けて動いたり波動を出したりする部分。ボディに付けられた目の部分は、マダイがバイトするときの目印となるバイトマーカーの役割も果たす。
 肝心なのはフォールや巻き上げの際のボディバランスで、このときの姿勢が安定していないと、ネクタイやフックが絡んでしまうトラブルが頻発する。
 視界から消えてからのこのようなトラブルは、アングラーが判断するのは難しい。トラブルを抱えている間は、マダイに有効なアピールができないばかりか、せっかくバイトに持ち込んでも、しっかりとしたフッキングに至ることは困難だ。
 ヘッドの形状は魚をバイトに持ち込んだり、着底時の根掛かりを回避するための性能を左右する重要な部分でもあるのだ。
 ヘッドの素材にはタングステンと鉛があり、鉛に比べて比重の大きいタングステンは、同じ重量でも小さくできるので水の抵抗が小さく、結果、フォールスピードを速くできる。潮流が速い場所で仕掛けが流されないようにするのにも有利だ。
 ただし、フォールの速度が速すきると、マダイの反応が鈍ることもある。フォールの速さを使い分けることで、マダイにアピールできることは間違いないので、ウエイトや比重を使い分けるローテーションもテクニックのバリエーションに入れておく必要がある。

糸をいちいち切らずとも素早く交換(ローテーション)が出来る便利なヘッドも発売されている
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ネクタイの色はオレンジ、ゴールド、グリーン、レッドが定番。素材はシリコン製のものが多い。

【ネクタイ】
タイラバの象徴的なパーツと言ってもいいのがネクタイだ。
 ネクタイの役割は魚を誘うことで、フォールや巻き上げの際の水の抵抗を受けて、ヒラヒラと揺れることで、視覚的なアピールと、波動によるアピールをおこなう。
 ヘッドやスカートとの組み合わせを考えながら、素材やカラーを選んで自作することも多く、形状を含め様々なバリエーションの物が、多くのメーカーから発売されている。
 ネクタイは魚が直接アタックしてくる部分で、噛み切られたりちぎれたりすることも多い部品でもある。
 特に、フグなどが多い場所では、毎回のように噛み切られることもあるので、現場には必ずスペアを持っていこう。
 このようなトラブルだけでなく、ベイトの種類や天候によってもネクタイのカラーを交換したいというようなシチュエーションは数多くあるので、タイラバを選ぶ際には、消耗パーツが交換しやすいことも選定の基準にしておくとよい。
 素材はシリコン製をおすすめする。天然ゴムより切れにくく、劣化の度合いも緩やかなことに加え、素材のにおいもあまりないことが理由だ。
 一説によると、天然ゴムのにおいをマダイはあまり好まないのではないかという話もある。確かに実際に口に含んでみるとその違いは明らかなので、動きや発色などほかの条件に大きな違いがないのなら、人間の判断の範疇であろうとも、リスクは少ないほうがいい。
 その日、そのとき、その場所でよく効く当たりカラーが存在するので、カラーバリエーションを揃えておくと心強い。

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【スカート】
ネクタイが尾ビレのようにヒラヒラと動いてアピールするのに対し、スカートは水中で止まっているときは広がってボリュームでアピールし、フォールや巻き上げの際には、水流を受けて細く束ねられ、見かけは魚のボディーのようでもある。
 このボディに噛みつこうものなら、中に隠れたハリが魚の口に掛かることになる。
 実際のマダイのバイトもこの部分に集中すると言われることから、スカートは水流を受けたときに、魚のボディを思わせるような形状になるだけの張りと、中に埋まったフックが魚の口にコンタクトする際に、邪魔にならない適度なボリュームが必要になる。
 もちろん、ネクタイ同様、カラーバリエーションや、消耗品としての交換のしやすさなどが求められるパーツでもある。

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【フック】
かつてタイラバは、アタリが多いが、フッキングしにくく、バラシが多いと言われていた。
 これは今でも一部のタイラバに見られる現象ではあるが、急速な進化の過程でその弱点を克服しているものもある。
 それを克服するために最も重要とされているのがハリだ。アタリが多くフッキングしないというのは、ハリ先がマダイに触れたときにしっかり刺さり込まずに弾いている場合が多く、これを克服するためには、先が鋭くて丈夫なハリを使用する必要がある。
 また、バラシが多いのはハリがフトコロまでしっかり刺さらないからなので、表面の滑りがよく刺さりの良いハリを選べば良い。奥までしっかり刺されば、ハリに掛かる魚の力は、ハリの強度が高い部分に集中するので、ハリ折れなどのトラブルも軽減できる。

ネクタイ、スカート、フックの各種パーツはこちら
鯛歌舞楽パーツ

タイラバの動きと反応

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ベイトがイワシなど小魚系のとき、マダイはベイトの少し下に位置し、弱って群れから外れたベイトを狙っているというのは先に説明したとおり。では、実際にタイラバがマダイの前を通過したときは、どのような反応を示すのだろうか。バイトのパターンとして定説になっているのは、タイラバのネクタイの端からガジガジと噛んでいくというもの。巻き上げのときに、ガツガツとアタリながら最終的にフッキングするというもので、前アタリが長く続いてからグンと重みが伝わるというタイラバの代表的なバイトパターンがこれだ。しかしバイトのパターンはこれだけとは言い切れないことが、いくつかの検証と魚群探知機の映像から分かっている。

バイトは真横から

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規則的に斜め上に向かう線がタイラバの動きで、多少の上下動をしながら横向きの動きを示しているのがマダイの動きだ。タイラバの動きとマダイの動きの接点が、バイトがあったことを示すものになる。このときマダイの動きはタイラバの縦の動きに対して、ほぼ真横からアタックしているのが分かる。つまりタイラバの巻き上げを追っているものではない。
 さらに興味深いのは、このマダイが何度かタイラバの動きに反応している点だ。マダイがいるレンジをタイラバが通過するたび数回それが繰り返されているのが分かる。つまり、このマダイは巻き上げられるタイラバを追い掛けてバイトしているのではないということだ。

バイト位置はスカートの端

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イラストは、通常2本装着されているタイラバのフックの位置を決める際のテストで、実験的に数本の長さが違うハリを取り付けたもの。
 このときに一番バイトが多かったのがスカートの端の位置だった。ちなみに、ネクタイの端の位置にセットしたハリへのバイトはほとんどなかったので、この点から考えてもマダイがネクタイの端をガジガジとやっているだけではなさそうだ。

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上下2mが範囲

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もう一つ画像から分かったことがある。それはマダイがいるタナの話で、その位置は個体によって違い、自分のタナをキープしながら浮いているマダイはそのタナを大きく外れて獲物を追うことをしない。
 つまりマダイはフォール→着底→巻き上げというタイラバの動きに付いていっているのではなくフォールで1回、巻き上げで1回の計2回、自分のタナをタイラバが通過するときにだけ反応しているのだ。
 このとき、マダイがタイラバを追う距離は上下それぞれ2mほど。リールのハンドルの回転にして3回転ほどの範囲でしかない。
 そしてマダイのアタックは真横から直線的に行われているので、この点から考えてもマダイがネクタイの尻尾をかじりながらアタってくるのではなさそうだ。巻き上げのとき何度もアタリがあるのは1尾のマダイがしつこく追い掛けているのではなく、タナが違う複数のマダイが交代でアタックしているとも考えられるのだ。

カラーセレクト

定番としての位置づけはオレンジ、水が白く濁る夏場はグリーン、水が澄む冬場はアマダイにもよく効くと言われている白系のカラーを中心にローテーションしてみよう。
 細かな色めよりも明暗が重要で、コントラストを強く出して目立たせるのか、弱くして周りに馴染ませて自然に誘うのかが選択の基準になるので、カラーバリエーションを増やすときは明暗の2色を基準に考えよう。
 特にカラーに対してこだわらないという人もいるが、釣れない時間が長く続いたときには効果的な面もある。
 気が緩んで巻き上げがいい加減になると釣れなくなるのは確かなので、カラーを変えることで釣り人のモチベーションを保つという意味からもカラーチェンジは有効だと言える。

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ヘッドのカラーからスカートやネクタイまでカラーバリエーションは多い。選択に悩んだら、まずはスカートの色を変更してみよう。

やり取り

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タイラバの仕掛けの重さと、マダイ特有の首振りのおかげで多少のバラシはあるとしても、なるべくバラさないようにしたいものだ。
 基本的には強引なやり取りは厳禁、リールのドラグを緩めに設定しロッドの曲がりを生かした滑らかなやり取りが望まれるところだ。
 魚が掛かったら、リールは一定の速度で巻きっぱなし。ロッドはティップを水面と並行もしくは少し下げ気味にし、意図的な上げ下げはしないように心掛ける。
 魚が突っ込もうが走ろうがドラグとロッドの粘りに任せて一定のテンションを掛けたまま巻き続けるのがセオリーだ。

2本掛け

ハリを2本とも掛けるようにすると、バラシが少なくなる。ハリ掛かりしたときに、意図的にリールのクラッチを切ってテンションを緩めマダイが横もしくは下に向かって泳ぐようにコントロールすると、掛かっていないほうのハリが魚に触れて掛かりやすい。
 この方法が有効なのは40㎝前後の食べごろサイズのマダイで、なまじっか釣り人がコントロールできるサイズのため頭はつねに上向きで2本目のフックが掛かりにくい状態で寄せられているからだ。
 大型のマダイにハリが2本とも掛かっていることが多いのは、わざわざテンションを抜かなくてもトルクがあり、横や下に向かって走り出すので2本目のハリが掛かりやすいからなのだ。
 とはいえ、テンションを緩めるのはランディングのセオリーに反するリスキーな行為。当然緩めすぎるとバラシにつながるので、2、3尾釣り上げて余裕があるときに2本目のハリを掛ける練習をしてみるといいだろう。

マダイの生態や性質について詳しくはこちら


*監修 株式会社ケイエス企画

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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