ハタ科は3亜科60属以上約450種の魚が含まれる大きなグループで、本種はハタ亜科マハタ属に分類されている。マハタ属には、ほかにアカハタ、アオハタ、キジハタ、クエなど釣りの対象や食用になる魚も多く含まれる。
マハタは、太平洋側では千葉県以南、日本海側では新潟県以南の西日本各地、西部太平洋、インド洋、大西洋の温帯域に広く分布する。
マハタ【真羽太】
- 分 類スズキ目ハタ科マハタ属
- 学 名Epinephelus septemfasciatus
- 英 名Seven band grouper
- 別 名ハタジロ、シマアク、カンナギ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
全長1m超まで成長する大型種。体形は側扁して丸みを帯び、尾ビレは後縁が扇のように丸い。口は大きく、縁が厚く、下アゴが上アゴより前に突き出ている。背ビレの棘条は非常に太く鋭く、軟条との境界には切れ込みがない。
体色は紫色がかった淡褐色。体側には黒褐色の7本の横縞があるのが特徴で、体側だけでなく、背ビレにもこの縞模様が及んでいる。個体によっては縞の部分に不規則な斑が飛んでいるものもいる。
この横縞は、幼魚の頃はくっきりとしているが、成長とともに不鮮明となり、体全体が黒褐色に変わり、同属のクエとよく似てくる。クエと見分けるポイントとして、本種は後鼻孔が著しく大きいこと、前鰓蓋(さいがい)(さいがい)骨の後方下縁に数本の棘があることなどがある。また、マハタモドキという近縁種もおり、尾ビレの後縁が白いことで区別できる(マハタモドキには白縁がない)。
水深50~200mほどのやや深場の岩礁帯に単独で棲む。昼間は藻場や岩礁の陰でじっとしており、夜になるとサバやアジなどの魚、エビ・カニなどの甲殻類を大きな口で飲み込むようにして食べる。
生態は不明な部分が多いが、産卵期は3~5月頃とされる。孵化後、成長に伴って深場へ移動し、約5年で成熟する。
マハタは成熟するまではすべてが雌で、成長して大きくなると雄に変わる雌性先熟の魚であり、成熟した後、さらに雄に変わるまでに5~6年を要するといわれている。正確な寿命もよくわかっていないが、体長は1m超、重さが50㎏超、ときには100㎏超まで成長した巨大魚もいて、ここまで老成した個体は「カンナギ」と呼ばれる。大きくなるほど深場へ落ちるため、めったに釣れるものではなく、各地で「幻の魚」「主」といった扱いをされている。
IGFAの世界記録には、2011年4月に沖縄県与那国島で釣られた186㎝・120㎏というマハタが認定されている。
英名のSeven band grouperは、体側に並ぶ7本の横縞の模様からきたもので、grouperはハタ類全般を指す。
マハタは漢字で真羽太、真旗の字を当てる。背ビレや尻ビレの前部の太い棘条を羽根とも呼ぶので、マハタはこの棘条が太くて鋭いことから羽太の字を当てたといわれる。そのほかに、ハタは斑(はだら)の「ら」が脱落したもので、斑紋のある魚という意味からきたともいわれる。
地方名も非常に多く、ハタジロ(大阪)、シマアク(和歌山)、カナ(島根・鳥取)カケバカマ(富山・石川)、アカバ(高知)、シマアラ(長崎)、タカバ(長崎・平戸地方)シマモウカ(鹿児島)、アラミーバイ(沖縄)などがある。さらにクエと混称してモロコ(東京・伊豆諸島)、マス(三重・尾鷲地方)、クエ(高知)と呼ばれることもある。
房総や伊豆半島などでもマハタは多いが、超大型を狙うとなれば九州や南西諸島などが圧倒的に有利だ。一年中釣れる魚だが、食味の旬は夏となる。
マハタは水深50~200m程度の深場に棲息するため、船から釣るケースが多い。泳がせ釣りやジギングのほか、小〜中型のマハタはひとつテンヤでも狙える。
【泳がせ釣り】
船からの泳がせ釣り(生きた魚、イカなどをエサにして大物を狙う釣り方)の場合、ヒラメ仕掛けに準じたひとまわり強めのタックルを使用する。ハリス長やオモリのサイズは、釣り場の状況や船長の指示に応じて調整したい。根を積極的に狙っていく釣りなので、仕掛けの予備は多めに用意しておこう。付けエサは、活きイワシが基本。
底ダナ(海底近くの層)を取りながらアタリ(魚が食付いた信号)を待つが、アタリはヒラメよりも明確に出る。一気に竿を引き込まれたら、アワセ(魚の口に針を掛ける)を入れつつ素早くリールを巻くことで、魚をできるだけ底から引き離すようにするとよい。
【ジギング】
ジギング(メタルジグを使用したルアー釣り)でマハタを狙う場合は深場を攻めるケースが多いため、200g以上の重いジグをシャクることができるタックルを使いたい。図は大型のマハタを想定したもの。ラインの太さは釣り場の状況に応じて使い分けたい。根掛かりの多い場所では、ジグのフックはフロントのみとする。
製品例
メタルジグ
■詳しい釣り方解説
・これから始める完全ジギング入門(船釣り)
ハタ類のなかではクエと並んで高級魚として扱われており、長崎県などではマダイよりも珍重されている。
一般的にはあまり店頭に並ぶ魚ではなく、料亭などで使われることが多い。また、養殖技術の進歩により、市場で出まわっているのは養殖魚が多く、天然の水揚げは非常に少ない。
旬は夏で、透明感のあるプリプリとした白身が特徴。大型のものほど肉質が硬いので、刺身の場合は2~3日冷蔵庫で熟成させてから薄造りにするといい。アラからもいいダシと上質の脂が出るので、潮汁や鍋物も絶品。フライや煮付け、ムニエルなどにしてもおいしい。また、皮や腸、胃袋は湯引きに、心臓や肝は煮付けや塩焼きにしてもおいしく、捨てるところはほとんどない。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)