◆こんなところで狙える
ボートゲームが中心かと思われている タチウオだが、ショアから狙うことも 可能。条件さえそろえば良型を上げる こともできる。強烈な引き味と重量感 が魅力だ。
常夜灯周りなどベイトの集まる場所はポイントとなりやすい。しかし回遊魚であるため、その場にとどまることは少ない。釣れなくなったら、レンジも含めて広範囲を探ってみよう。
◯漁港内が有望
船釣りでも人気がある魚種で、エサ釣りでは昔からおかっぱりでも親しまれている。近年はルアーゲームでの人気も高まり、専用のタックルが販売されるほど盛んになってきた。
タチウオは基本的に夜行性で、回遊性が高い魚だ。夕刻が近づくにつれて深場から浅場へと移動して捕食を活発に行う。その後、時間が経過し日が暮れると深場に戻って行く。
堤防から狙う場合、ナイトゲームでは定番の常夜灯が目に付くが、回遊性が高いタチウオの場合はそれが大きくは当てはまらない。無論、ベイトが溜まりやすいからポイントにはなるが、回遊性が強いため短時間の滞在となりやすくすぐに釣れなくなることも多い。このため、オープンエリア以外は広範囲を探るように心掛けよう。
○ポイントとなる場所
国内の全ての漁港で狙えるわけではない。地域性が強く、接岸する場所は地形や砂質にも大きく左右される。
底質は岩盤や大小の石が交じる岩が多い場所ではなく、砂泥底になっているところを好んで回遊してくる。さらに、水深4m以上で足元から急に深くなっているような外海に面した港湾や大型の船舶が停泊する深いエリアが好ましい。
加えて、潮の流れも重要。あまり泳ぐのが得意な魚ではないが、潮が淀んでいるような潮通しの悪い場所で意外と良型が食うことも。少し速く流れているポイントでは数が見込める。ただし川のように流れている場合は、少しでも流れが緩むエリアを探して狙ってみよう。港湾や堤防以外でも、エサが豊富な河口付近もポイントとなる。この場合水深ができるだけあった方が良く、雨が降って真水が流れ込んでいる状況はNGである。
◆タックルとルアー
○ロッド
タチウオ専用ロッドが一番。長さは8~9ftで問題ないが、特に遠投するエリアを狙う場合は長いほうが有利になりやすい。
タチウオを狙うルアーは重いものを中心に使用するため、長時間使っても疲れにくい少し硬めのロッドを選ぶようにしよう。ただしロッドアクションを多用するため取り回しの良い軽量ロッドがおすすめ。リールとロッドの重量バランスも重要となりやすい。
○リール
タチウオゲームでは重いルアーを中心に使った飛距離が必要とされるから、3000番クラスのリールが望ましい。ただし大きくなるほど重量も増えるから、必ずロッドとのバランスを考えて購入しよう。軽すぎてもアンバランスになることもあるので注意。
○ライン
ルアーをキビキビ動かすことが要求されるタチウオゲームでは、伸びが少ないPEラインがルアーを操作しやすい。加えて遠投性を確保するため細いラインが適しており、初心者でも1号以下がおすすめだ。強度的には問題なく、タチウオの歯で切られるのが心配なら、先端にワイヤーリーダーをセットするという手もある。
○リーダーライン
タチウオの鋭い歯からラインブレイクを防ぐために、リーダーラインは太くて丈夫なものをセットしたい。リーダーラインの役目は、魚が走ったときにその衝撃を和らげるためのショックリーダーと、歯の鋭い魚に対応するためのファイティングリーダーとに分けられる。タチウオ狙いでは後者がメインの目的となる。通常はフロロカーボンラインを使用するが、さらに丈夫なのがワイヤーリーダー。ルアーのロストを防ぐという点ではかなりの効果が見込める。水切れが良く、手返しが早くなるという点でも他の素材を使ったリーダーに比べてメリットは大きい。しかしフロロカーボンなどに比べるとしなやかさでは劣るため、ルアーのアクションに影響するというデメリットもある。使い分けるとしたら、1m以下の指3本クラスならフロロカーボン、それ以上なら状況によりワイヤーリーダーも視野に入れよう。
ワインドゲームはタチウオゲームにおい て主流を占めつつある。フックを装着す るときはまっすぐにしておかないとまっ すぐ泳がないため注意が必要。装着後、 足元を泳がせて確認すると良い。
メタルジグは遠投性が高く、広範囲や深 場を素早く探れるメリットがある。
○ルアー(ジグヘッド+ワーム)
近年のタチウオを狙ったルアーゲームではワインド釣法が主流で非常に実績が高い。専用のアイテムも多くあり、これらを使用するのが一般的だ。独特のダートアクションを演出することで高アピールを誇る。
専用のジグヘッドにルアーをまっすぐにセットすることが重要。まっすぐきちんとセッティングされていないとルアーが正常な動きをしない。セットしたらキャストして左右に寄ることなく引けたらOK。
ワインドは縦のレンジを探ることに適したルアーであるが、夕まづめに浅いレンジに浮いてきたタチウオを手返しよく狙うのにも用いられる。
デメリットは、タチウオの鋭い歯でワームを切られてしまうことである。素材の硬いものを選べばさほど気にならないが、切られた場合を見込んで予備を用意しておこう。
○メタルジグ
船からタチウオを狙うときの定番ルアーで、ショアからも同様に効果を発揮し、広範囲を素早く探るのに適しているルアーだ。
浅いレンジから深いレンジまでロッドやリールの操作で自在に狙うことが可能で、深場に落ちたタチウオの居場所を見つけ出すときにも活躍する。
釣れないときや、突然釣れなくなったときにサーチルアーとして使うと良い仕事をしてくれる。タチウオ狙いでは直線的にフォールするものよりも、ゆっくりヒラを打ちながらフォールするタイプがヒットを誘いやすい。
メタルジグのフックセットは、フォール中に後方からバイトしてくるタチウオの性質を考え、リアにはトレブルフックを付けておいた方がフッキングの確率は上がる。フロントにもアシストフックをセットして入ればタチウオをがっちりとフッキングしてくれる。
○バイブレーション・ミノー
タチウオが釣れるレンジは変わりやすく、それは時間帯に比例している場合が多い。夕まづめは浅く、それ以降は足元付近で深く、朝方になると遠くへと移動する。このレンジ移動もあるが、群れが入れ替わるわけではないから、同じルアーだと食わなくなることもある。
ここでバイブレーションやプラグに切り替えることで、さらに釣果を伸ばす可能性を広げよう。ワインドやメタルジグとは異なったアクションでリアクションバイトを誘うのである。
ミノーは浅いレンジを、バイブレーションは中層~底層を探るのに適している。どちらも基本的にシャクリを入れる必要はなく、狙いのレンジをリトリーブしてくれば良い。
◆狙い方
○ナイトゲームが本番
タチウオは夕まづめからのナイトゲームが本番。日中は沖の深い場所にいることが多いから、ショアから狙うのではなく、大抵は船からジギングやテンヤで釣るのが主流である。
夕まづめはかなり近い場所まで接岸しており、さらに浅いレンジで捕食している場面が多くなる。このため、比較的浅いレンジで活性の高い個体を効率良く狙うことが可能となる。このとき手返しが重要で、トラブルのないように心掛けたい。夕方の狙い方の手順は、まずはタチウオの居場所を確認するため、遠投して深くから探り始めよう。日が傾くのと連動して、手前に&浅くを広範囲に探り始める。
ちなみに潮通しの良い堤防の先端やコーナー部分は、潮流の変化も出やすい場所だから鉄板ポイントになりやすい。テトラ帯もベイトが多く逃げ込む場所で必然的に魚影が濃くなる。
満潮時には湾奥に寄ることもあるから、先入観を持たずに転戦しながら広く探るのが良い。人気ポイントは人が多くなるから、譲り合いながら釣りを楽しもう。
○ワインドゲーム
遠投性と機動性を兼ね備えたワインドゲーム。爆発的な釣果を上げることもできるから頼もしい。
操作方法は簡単。キャスト後、任意のレンジまでルアーをフォールさせ、リールのベイルを起こしてラインが張るのを待つ。このときロッドは下方45度ほど下げた状態にする。
そこからロッドを上方45度くらいまでシャクるが、リールのハンドルを回しながら(1回転)シャクること。これでルアーが左右に大きく跳ね上がりタチウオに強烈にアピールできる。
その後、素早くティップを下げてラインのテンションを抜き、ルアーをフォールさせラインが張るまで待つ。この繰り返しがワインドアクションの基本である。海中のルアーの動きは、左右にダートしながら上下に動いている。ロッドの振り幅を変えればダートや上下運動の動き幅を変えることができる。アクションを入れるときは、ロッドを握る力に緩急をつけよう。無駄な力が入っているとすぐに疲れてしまうし、うまくアクションをつけられないことがあるから注意が必要だ。
数を伸ばすためには、カラーローテーションなども視野にいれておこう。
○メタルジグによる攻略
夕方、まだタチウオが完全に接岸しきれていない明るい時間帯に力を発揮するのがメタルジグ。使い方は一旦ボトムまで沈めて、ミドルレンジまで一気にシャクリ上げる。再度フリーフォールさせてボトムまで沈めることの繰り返しだ。しかしタチウオは泳ぎが速くないから、ルアーの速い動きにはついて行けない。ゆっくりした動きでアクションさせるのがコツ。フォール中にバイトしてくることが多いから、ラインを緩めすぎると歯で切られてしまうことが多くなるから注意。
○バイブレーションによる攻略法
時合が終わり、タチウオがボトム付近に移動したらバイブレーションやシンキングミノーの出番である。
ワインドは高活性な個体には効果的だが、一度活性が下がってしまうとなかなか追わせることができない。その点、バイブレーションはボトムを攻めるのも向いているし、ワインドよりアクションが大人しい。ゆっくりした速度でリトリーブしてくればいいだけだから、ビギナーでもアクションを付けやすい。レンジを下げたいときはティップを下げてリトリーブしよう。
◆知らないと損するテクニック
状況に合わせたカラーセレクトを行うため、カラーは複数持っておこう。どれがヒットカラーなのか、交換しながら探るのが重要だ。
ナイトゲームでは発光体をワームにつけることで釣果 アップがはかれる。これも周りに差をつけるために必 ず準備しておきたいアイテムだ。
タチウオが足元近くまで接岸している なら、アイスジグも有効。他のライト ゲームと同じく、アピール力が高いか ら高確率でバイトを誘える。
○ワームのカラーセレクト
定番はグロー系とケイムラ。しかし絶対釣れるというわけではない。だからもっと釣るためにはローテーションする必要がある。いきなり多く用意するのは難しいだろう。定番のグロー系とレッド系を選ぶ。どちらも予備を含めて3本ずつは準備しておく。次に選ぶのはオレンジやピンク、クリアカラーだ。色数が多いほどローテーションは成立する。
○ナイトゲームに超有効な発光体
ナイトゲームの鉄板カラーはグロー系。夕まづめから効果のあるワインドで釣果を上げやすいカラーである。
さらに効果を上げるためのアイテムがケミホタルなどに代表される発光体だ。ワインド専用のワームには発光体をセットできる専用の穴付もあり、これを付けることによってかなりの高アピールを付与できる。
グロー系のカラーとはまた違った輝き方をする上、水が濁っているときは特に効果が大きいのでおすすめだ。
○アイスジグ
操作方法はいたって簡単。キャスト後、探りたいレンジまで沈めたらリールを巻かずにロッドをシャクリ続けるだけで良い。このとき注意しなければならないのは、糸フケを出し過ぎないこと。そうすると鋭い歯で切られてしまうことがあるから注意。キャストせずに足元を狙うことも可能だ。
スナップラップはキャスティングに特化したアイスジグ。キャスティングして狙いたいとき、トゥイッチを入れたり、大きくダートさせて動きを止めて食わせの間を作ることでヒットする。バイブレーションやメタルジグのように操作することが可能だ。反応によって使い分けて釣果を伸ばそう。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)