カツオ【鰹】

カツオ【鰹】 イラスト:鰹
  • 分 類スズキ目サバ科カツオ属
  • 学 名Katsuwonus pelamis
  • 英 名Skipjack tuna
  • 別 名ホンガツオ、マガツオ、ヤタなど

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

9e894732 a07d 4e5a b6fc 2ecb70b60dbc

日本の太平洋沿岸に棲息するカツオは、夏に黒潮と親潮がぶつかる三陸沖あたりまで北上し、秋に親潮の勢力が強くなると南下する回遊魚である。
カツオが属するサバ科の魚類は、沿岸域に棲息していた現存のサバの原型的なものが、進化の過程で沿岸から近海へ、さらに外海域へと分布域を拡大しつつ分化したものと考えられている。したがって、カツオはマグロ類とともに広い生活圏を獲得した進化の先端にある魚なのである。近年、生化学的遺伝形質に基づく研究により、カツオはインド洋に起源をもち、大西洋、および太平洋に棲息域を広げていったものと想定されている。
カツオは世界共通種で、各大洋の表面温度がほぼ20℃以上の熱帯から温帯の海域に広く分布する。熱帯・亜熱帯の海域には一年中棲息するが、日本近海のような温帯域では、黒潮に沿って春に北上、秋に南下という季節的な回遊を行う。太平洋側に多く、日本海側ではまれである。
マグロ類と近縁の魚で、英名(=tuna)からわかるように、欧米諸国ではマグロの仲間として扱われる。日本でマグロと混合した呼び名がないのは、古くからカツオが「かつお節」などの干魚として好んで用いられ、主として刺身にされるマグロとは利用や消費の形態を異にする伝統によるものであると考えられる。


特徴

Cedfafac 2c15 4a31 ab45 eb0a481553ba

海中を泳ぐスピードが最高で時速60㎞にも達するといわれているカツオは、海のスプリンター。高速遊泳に適した典型的な紡錘形の体形で、丸みが強い。大型のものは全長1mに達するが、漁獲が多いのは全長50㎝ほどである。
体色は、背面が濃い藍色で、腹面は虹彩を帯びた銀白色。体側腹面に4~7条の暗色の縦縞が走っている。この縦縞は、活きているときには不明瞭である。縦縞とは別に、摂餌行動で魚が興奮状態にあるときなどは、体側に数条の横縞が浮き出る。また、死ぬとこの横縞は消え、縦縞が現れる。
マグロは全身がウロコに覆われているが、カツオは目の前方から胸ビレ・側線周辺だけにしかウロコがない。胸ビレが短く、浮き袋を持たないことも、マグロと異なる特徴だ。


性質

幼魚は、小さなイカ類や甲殻類をエサとしているが、成長するとカタクチイワシやシコイワシなどの小魚をエサとする。イワシの群れを発見すると、横隊をとり追跡を開始。群れを囲い込むと一斉に襲いかかる。そのイワシを追って、大群をなして日本近海に近づくのは、九州南部を皮切りに黒潮に乗って太平洋を北上する「黒潮ルート」、紀州の南から北上する「紀州ルート」、小笠原諸島・伊豆諸島沿いに北上する「小笠原ルート」、そして伊豆諸島の東の沖合を北上する「東沖ルート」の4通りのルートがあるといわれている。
なかでも有名なのが、フィリピン、台湾、南西諸島を経て日本列島の太平洋岸に現れる「黒潮ルート」。九州南部に近づくのが2月中旬。そして、3月中旬に四国沖、4月に紀伊半島沖、5月に伊豆・房総沖と北上を続け、6月には常磐沖、7~8月には三陸沖にまで進み、9月に北海道南部に達する。そして、水温が低下すると南下を始めるのだ。
ほかに、大洋の島周辺の、水温の高い水域で周年を過ごす瀬着きの群れもあり、日本周辺では南西諸島や小笠原諸島の付近に棲息している。回遊魚は比較的若い3~4年魚が中心だが、瀬着きの群れには大型の成熟魚が多い。
カツオの産卵場は、水温の高い熱帯、亜熱帯の広範な海域で、亜熱帯域では夏が産卵期であるが、熱帯域では一年中産卵する。卵の直径は1㎜程度で、一尾の産卵数は数十万~200万粒。産卵は表層で行われ、受精卵は一昼夜で孵化する。孵化した仔魚は約3㎜で、1年で体長約25㎝、2年で約50㎝、3年で約62㎝、4年で約70㎝に成長する。
カツオは大小の群れをつくって表層を遊泳するが、「スナムラ(素群)」と呼ばれるカツオだけで遊泳する群れのほか、流木の周辺に集まる「木着き群」、ジンベイザメに着く「サメ着き群」、イワシクジラに着く「クジラ着き群」、イワシなどのエサ生物を追っている「餌持群」や、それに海鳥群が伴う「鳥着き群」など、さまざまな漂流物や遊泳物に付随する性質がある。


文化・歴史

カツオは、古事記や日本書記、万葉集にも登場するほど古くから知られている魚だ。古代から食用にされてきたが、身質が柔らかく傷みやすいため、生食されるようになったのは鎌倉時代以降。それ以前は、堅くなるまで干してから食用としていた。そこから「カタウオ(堅魚)」と呼ばれるようになり、それが略されて「カツオ」と呼ばれるようになった、というのが定説である。
『北条五大記』には、北条氏綱(うじつな)が1537(天文6)年の夏に、小田原沖で酒宴をしていると、船上にカツオが飛び込んだことから「勝つ魚」だと喜び、その後、出陣の際には「勝負にカツオ」として酒肴に用いたとある。かつお節は縁起物としてとくに武家で珍重され、正月には甲冑の前に供えられたり、「勝男武士」「松魚節」の名で祝いの代表的な贈答品とされた。
現在の本節や亀節などの製法は、江戸時代に紀州や土佐で考案されたと伝えられる。仏家でもかつお節は「薬木を削る」と称して食べられたが、僧の隠語では木魚と呼ばれた。なお、神社の屋根の上にある鰹(かつおぎ=勝男木)は、カツオの姿に由来するともいわれ、カツオ釣りの所作をしてその大漁を祈る祭りが各地で見られる。


釣り方

98bcc001 4f3b 4875 a120 67055a487107

カツオは最大で体重10㎏以上にもなり、ハリ掛かりしたときのパワーは絶大である。目の覚めるような鮮烈なアタリ、竿が敏捷に弾かれるようなアップテンポで鋭角的なファイト、ほかの魚とはひと味違う特異な手応えは、筆舌に尽くしがたいほどスリリングだ。
土佐の一本釣りに代表されるように、船の舳先に乗った漁師が豪快に釣り上げる姿を想像しやすいが、ほかにもイワシエサのフカセ釣り、カッタクリ釣り、コマセエサ釣り、ルアー釣りなどさまざまな釣り方がある。また、地域差はあるものの、カツオの回遊次第では急深になっている磯やサーフなどから岸釣りで狙えるケースもある。

【カッタクリ釣り】

D3493cba 35f5 49b8 9d94 b8cc3abd9d84

カッタクリは、手釣りと竿を使う竿カッタクリがある。どちらも、エサの代わりに付けたバケをテンポよくシャクり上げるようにするのがコツ。竿カッタクリの場合は、一日中手持ちでシャクるので、短めで胴のしっかりした竿を選ぶといい。手釣りの場合、素手でイトを扱うと魚が掛かったとき指を切るので、必ず指ゴムをするようにしよう。
バケには、バラフグ、サバ皮、シャミ、サメ腸、ナマズの皮などが使われる。潮が濁っているときは白っぽいバラフグなど、潮が澄んでいるときは黒っぽいナマズなどが適している。

【ビシコマセ釣り】

D62a8516 643e 4614 a455 2d9358cf8541

この釣りでは、コマセ・付けエサともにオキアミを使用する。エサのオキアミは大型のものを2、3匹抱き合わせにして刺す。
釣り方は、船長の指示ダナを中心にコマセを撒きながら誘い上げる動作で食いを誘う。カッタクリで使うバケは擬餌バリのために動かさなければ魚の反応は得られないが、オキアミの場合はタナ(魚が泳いでいる層)さえ合っていれば置き竿でも食ってくることがある。コマセカゴのサイズは地域や船宿によって制約がある場合もあるので、事前に船宿へ確認をとろう。
さほど難しい釣りではないが、カツオ釣りは一瞬にして勝負が決まるので、船長が群れを見つけるまではいつでも仕掛けを投入できるよう準備しておくこと。また、乗合船の場合はオマツリ(他の人の釣り糸ががからむこと)を防ぐため、カツオが掛かったらなるべくライン(釣り糸)を出さず一気に巻き上げることが大切だ。
製品例
仕掛け

【一本釣り】

5083a73e 7867 4b75 b07c 6f7144086068

一本釣りの場合、かつては太い竹竿が使用されていたが、現在は丈夫なグラスファイバー製の竿が主流。船宿の貸し竿を使うのが一般的だ。ミチイト、ハリスの長さは船宿によって異なるのでそれに従おう。
ナブラが見つかると、仲乗り(スタッフ)がイワシを撒く。散水が始まり、カツオを船に着けるためさらにイワシを撒き続ける。そして、船長の合図とともに釣り開始。この後一瞬で終わることもあれば、数十分釣れ続くこともある。
カツオが掛かったら、オマツリやバラシ(魚が針から外れて逃げる)を防ぐために遊ばせずに一気に抜き上げることが肝心。カツオが下を向いて走り始めたらなかなか抜き上げられないため、上を向いているうちに抜き上げるのがコツだ。

【ルアーフィッシング】

70587c3f d443 4402 b3f8 705d67e79e2b

カツオのルアーフィッシングには、海面のナブラ(小魚の群れが中、大型魚に追われ海面にさざ波をたてながら逃げ惑う状態)などを狙うキャスティングと、魚探でカツオの群を追いかけながらのバーチカルジギング(船からジグを垂直に落とし、竿を上下に動かしながらリールを巻いてくる釣り方)の2通りの釣り方がある。
キャスティングは、表層でルアーをスキッピング(船からジグを垂直に落とし、竿を上下に動かしながらリールを巻いてくる釣り方)させて狙うことが多いが、水面下のダート(ロッドを操作して、ルアーを大きくジグザグに泳がせる釣り方)やフォール(沈める)が有効なこともある。ジギングでは、カツオの泳ぐタナを見つけて、そこを通過させるようにする。メタルジグは30~60gが一般的。キャスティングではトップウォータープラグ(水面で誘うタイプのルアー)やミノープラグ(小魚型ルアー)なども使う。
製品例
メタルジグ


料理

9ff1103a 11db 46d8 9556 4f801d53fd64

ハンバーグ

9422bc2b 139a 4a47 be5f bf8d26824f65

タタキ

「目には青葉 山ほととぎす 初がつを」といわれるように、江戸時代においては「粋」の観念によって初ガツオ志向が過熱し、非常に高値となった時期があった。ただし、実際は水揚げが多くなる夏と秋が旬であり、産地ではその時期のものが好まれていたという。現在では、脂の乗った秋の戻りガツオが好まれる傾向にある。しかし、脂の少ない春も、脂で身を白く濁らせた秋のカツオも、いずれも美味だ。
カツオの身にはイノシン酸が多い。これは、高速で泳ぎ続けるために大量のATP(アデノシン三リン酸)を蓄えていて、死ぬとこれが分解されてイノシン酸になるからである。また、クレアチンやヒスチジンなどのウマミ増強成分が多いのも、味を濃く感じさせる要因。さらに血合いの肉には鉄分が多く含まれている。ビタミンA、B、C、D、Eも多い、滋養の宝庫である。
カツオといえばタタキが有名。作り方は、カツオの節を皮側を中心に表面だけ強火で焼き、表面が焦げる寸前に氷水に浸けて冷やす。稲わらの強火で焼くのが理想だが、ガスコンロでも構わない。水気を切った節を厚さ1㎝ほどに切り、大皿に盛って好みの薬味(タマネギ、ニンニク、大葉など)を散らし、合わせ酢をたっぷり注いで完成だ。
カツオのハンバーグは、包丁で細かく叩いたカツオの身に刻みネギと生姜汁、醤油を加えてよく混ぜ、小判形にまとめたらフライパンで焼いてだし汁と酒を加え、フタをして中に火が通るまで蒸し焼きにする。
ほか、角煮、照り焼き、塩焼きなどで食しても非常においしい。酒盗といわれる内臓の塩辛は、おつな酒の肴である。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

ページTOPへ