トロリ濃いめのあんがポイント - スズキの酒蒸し銀あん仕立て
スズキは見た目も凛々しく、銀白色に輝く姿も魅力的。
釣りのターゲットとしてだけでなく、食材としても優秀で、淡白な白身はどう料理してもおいしい。
料理の際のポイントは、皮目をきれいに掃除して、旨味を閉じ込めること。
東京湾のスズキは、過去の汚れた海のイメージが強いのか、食材としての知名度はまだ低いが、移動性の「腹太スズキ」は、けっして侮れない。
体色が緑がかった金色で、魚体が全体的にのっぺりしている「居着き型」のスズキ(おもに湾奥で釣れるもの)は臭くてまずいのだが、
体色が銀白色で背中やヒレが濃く、側線もくっきりして、体形もメリハリがある「移動型」のスズキは、回遊しながらイワシを捕食しているので、味は抜群だ。
薄味で素材の旨さを引き出し淡い色合いを演出
スズキを酒蒸しにして、そこに濃いめの銀あんをかけ、季節の山菜を添えて、あっさりした和風の一品に仕上げてみよう。
スズキは、皮に独特のクセがあるが、料理によっては、この皮を生かすことがポイントとなることも、さばく前に、ウロコを取りながら、皮目をきちんと掃除しよう。
新鮮な魚ほど、加熱すると皮や身がはぜて崩れやすいので、盛りつけの際に注意が必要。
●材料/4人分
スズキ(50センチ級) 1/2尾
塩 適量
酒 適量
だし汁 適量
水溶きカタクリ粉 適量
山菜類(コゴミ) 適宜
下処理・作り方
①ウロコを取り、頭を落として内臓を出したら、全体を水洗いし、三枚におろす。何度かに分けて包丁を入れ、刃先で中骨の感触を感じながら、ていねいに切り進める。
②腹骨の端の部分に切れ目を入れる。そこからあらためて包丁を入れ、刃を腹骨の下に沿わせるようにして腹骨をすき取る。
③腹骨を取り除いた半身を、皮付きのまま、そぎ切りで、やや大きめの切り身に切り分ける。ていねいに作る場合には、切り分ける前に毛抜きで血合い・骨を抜いておく。
④皮目に飾り包丁(包丁目)を入れる。これは、熱で皮が縮むのを防ぎ、火の通りや味の入りをよくする為。
⑤キッチンペーパーを敷いたザルなどに④を並べ、そこに塩を振り30分ほど置いておく。こうすることで余分な水分や臭みが取れる。
⑥耐熱容器に切り身を並べ、日本酒を振りかけたら、ラップをかけ、時々様子を見ながら電子レンジで加熱する。加熱時間は電子レンジの出力などで変わるが5分程度が目安。
⑦蒸し上がった状態。身がはぜているのは、魚が新鮮な証拠。バラバラになりやすいので、盛り付けは慎重に行おう。
⑧沸かしただし汁に塩で味付けし、魚に絡みやすくするため、水溶きカタクリ粉でやや濃いめのとろみを付け、銀あんを作る。器に⑦と塩茹でした山菜を盛り、銀あんを回しかけて完成。
スズキの梅肉和えかつお風味
あっさりした白身ながら、確かな歯ごたえがあり、噛むと旨味が出てくるスズキは、ぜひ刺身でも味わいたいもの。もちろん、わさび醤油で食べてもおいしいのだが、今回はちょっと変化をつけて梅肉和えにしてみよう。
尚、自家製梅かつおも簡単に作れる。種を除いた梅干を包丁でたたき、かつお節を加える。少量のしょうゆをたらしたり、日本酒やみりんなどを適量加えて伸ばしてもOKだ。
●材料/4人分
スズキ(50センチ級) 1/2尾
梅かつお 適量
大葉 適量
①スズキを三枚におろし、腹骨をすき取ったら、血合い部分で切り分けて節取りする。この時、頭のほうから2/3ほどのところまで血合い骨があるので、切り分けながら血合い肉を一緒に取り除いておく。節取りした身は、皮を引き、そぎ切りで、やや小ぶりの薄い刺身にする。
②この刺身をボウルなどに入れ、市販の梅かつおと和える。十分混ざったところで、大葉を敷いた小鉢に盛れば完成、さっぱりとした一品だ。
【料理監修:森山 利也】
千葉県富津市で居酒屋「はいから屋」を25年営み、現在は築地場外市場で曜日限定の店「JOJO BAR」をプロデュース。自ら店に立ち旬の魚や自家製の野菜など、新鮮な食材を使った様々なメニューを楽しめる。
そして包丁捌きの基本や海に関わることを学べるリアル「森山塾」も主宰。
また、ベテランの釣り人として各方面で活躍し、豊富な経験と見識を持つ。
上記は森山氏がビギナーにも無理なく作れるものとして紹介していただいたおすすめ料理だ。
【協力:株式会社 舵社】
参考本:スクラップブック of 釣果料理
http://www.kazi.co.jp/public/book/bk04/5126.html
4人の達人が贈る、全38魚種、144種のレシピを掲載
『ボート倶楽部』の連載や特集記事の中から、さと丸、森山塾長、Mr.ツリック、ウエカツ水産の4人が書いた釣果料理の記事だけを厳選&抜粋して集めた単行本。
釣った魚をおいしく食べる達人たちのおすすめ料理を作れば、みなさんの家の食卓が豊かになること間違いなし。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)