カサゴ【笠子】

カサゴ【笠子】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類カサゴ目フサカサゴ科カサゴ属
  • 学 名Sebastiscus marmoratus
  • 英 名Marbled Rockfish
  • 別 名ガシラ、アラカブ、アカメバル

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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カサゴが属するフサカサゴ科は、50属300種ほどからなる大きなグループで、釣りの対象魚としても人気のメバルやムラソイなど数多くの魚種を含む。
カサゴには、アヤメカサゴやイズカサゴ、ウッカリカサゴなど、なかなか見分けがつかない近縁種が多い。アヤメカサゴは黄色いまだら模様で比較的容易に判別することができるが、とくにウッカリカサゴは、その名が示す通り「うっかり」カサゴと間違えてしまうほど判別が難しい。ウッカリカサゴは1978年、ソ連の学会誌に新種として発表されたもので、その後、魚類学者である阿部宗明(あべ・ときはる)氏が「日本の魚類学者もうっかりして新種と気付かなかった」と、この和名をつけた。
本種の分布域は、北海道南部以南〜東シナ海と幅広い。


特徴

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カサゴで特徴的なのは頭部の棘で、鼻、眼の前・上・後ろ、耳、額、そして頭と頭頂に1対ずつの棘がある。アヤメカサゴには、これらの棘にくわえて眼の下方にも棘がある。
体色は個体や生活環境による変異が大きく、濃い褐色から赤味を帯びたものまでさまざま。一般に、浅場にいるものは黒っぽく、深場になるほど赤っぽくなるといわれている。海の深いところでは赤い光が届かないので、赤っぽい色が保護色となるためと考えられる。また、カサゴの胸ビレの付け根付近にある暗色斑は、ウッカリカサゴと判別するひとつの手だてとなる。


性質

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沿岸の岩礁帯に棲み、主に夜行性で日没後にエサをとる。成魚は甲殻類やハゼ、トラギスなどの小魚、さらにはヒザラガイやフジツボまで食べる。0歳の未成魚は、アミや多毛類も捕食する。
大部分が2歳・15~16㎝で成魚になり、メスは11~12月に成熟する。抱卵数は2歳で10,000粒程度だが、4〜5歳になると70,000粒ほどと非常に多くなる。胎内で受精する卵胎生で、オスが成熟する10~11月初旬に交尾し、メスの卵が成熟する11月ごろに受精する。仔魚は12~2月に約15日間隔で3、4回にわたって産まれ、20㎜近くに成長すると浮遊生活から底棲生活に移行する。成魚は体長20㎝ほど、最大で30㎝ほどにまで成長する。
カサゴは縄張りをもつことでも知られており、激しく縄張り争いをする光景も観察されている(写真)。しかし、放浪性の個体や、定住するものの縄張りはもたない個体など、さまざまな性質をもち、行動の異なる個体が混在する。
なお、ウッカリカサゴとアヤメカサゴは、カサゴより深いところに棲息する。


文化・歴史

カサゴの地方名は、近畿・四国ではガシラ、ガシ、熊本・鹿児島ではアラカブ、ガラカブ、ガブ、岡山ではアカメバル、アカチン、宮崎ではガガラ、ホゴというように非常に多彩である。
漢字では「笠子」、もしくは「瘡子」と書き、前者は頭部が大きく笠をかぶっているようにみえるところから、後者は皮膚がただれて瘡蓋(かさぶた)ができたようなゴツゴツした顔をしているところからきている。また、地方名のガシラとは、頭(かしら)が大きい魚というところからつけられたといわれる。
カサゴは武骨でいかにも勇ましい面構えをしているところから、江戸時代には端午の節句の祝魚として用いられた。また、佐渡島では魔除けとしてカサゴの干物を軒先に吊るしたという。反面、カサゴをマイナスイメージにとらえた話もある。ひとつは、「磯のカサゴは口ばかり」ということわざ。これは、カサゴは大きな口に対して食べる部分が少ない、つまり、口先ばかりで実行力がないことを意味する。
また、寛政の末、カサゴが江戸に出回ったが、味がよくなかったことから、愚か者を意味する「あんぽんたん」と呼ばれたこともあったという。くわえてその面構えから「つら洗わず(顔を洗っていない)」とも呼ばれた。


釣り方

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カサゴは堤防や磯まわり、ゴロタ場などの岩礁帯に棲息しているので、根掛かり(海底の障害物に針、オモリが引っかかる)に考慮した仕掛けや釣り方が必要だ。また、沖の深い根や沿岸でも岸からは届かないポイント(魚の居る場所)は船釣りで狙う。

【探り釣り】

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岩礁や防波堤の隙間にエサを落とし込んだり、軽く投げて海底を探りながら釣る方法。
ポイントを広く探るには4.2~5.3mの長さのある磯竿が有利だ。また、足元を狙う場合は6~7フィートのルアーロッドが使いやすい。仕掛けはミチイト(竿、リールから来るメインの糸)にブラクリ(オモリと釣り針が一体で、着色した物)などを付けたシンプルなものだが、ひらひらとアクションしながら沈下する「ブラー」などの短冊型オモリを使うとアピール度がアップする。エサは、アオイソメやサンマの切り身などが一般的。
ポイントに仕掛けを投入し、できるだけ海底近くまで落とし込んでいくのが基本。アタリ(魚が食付いた信号)があったら即アワセ(魚の口に針を掛ける)して、カサゴを根(海底にある岩場)から引き離そう。

【ルアー釣り】

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海底をじっくり探るなら、ワームのテキサスリグが一番。ワームは上下動で誘えるホッグ系と、スイミングで使うシャッド系を用意しよう。カサゴのエサとなる小魚が多い状況では、ミノープラグも効果的だ。

製品例
ワーム

【投げ込み釣り】

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磯や岩礁の多い堤防などでは、投げ込み釣りも人気だ。
岩礁帯は根掛かりが多いので、胴突き仕掛けでエサ(ハリ)が底を離れるようにして、オモリは捨てイト(切れても良い様に、オモリの上に結ぶ細めの糸)で接続しておく。
エサはイソメ類やイカの短冊などを使う。また、サンマの短冊の塩漬けも食いがいい。
仕掛けを投入したら置き竿でアタリを待ち、アタリがあったら確実にアワせる。魚が掛かったら根に入られないように、一気に巻き上げるのがコツだ。

【船釣り】

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カサゴは船釣りでも人気の魚。竿や仕掛けは各船宿で推奨するものがあるが、胴突き仕掛けで狙うのが一般的だ。図は浅場で釣るときの仕掛け例。
メバルほど根から浮き上がってこないので、きちんと底を取る(オモリを海底まで沈める)ことがカサゴの釣り方のポイント。根掛かりを嫌がって仕掛けを底から離しすぎると釣果が上がらない。


料理

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一年中おいしく食べられる魚だが、旬は冬〜春。身は引き締まっていて、クセのない上品な味わいである。ただし、鮮度が落ちるのが早いので、釣ったらすぐに締めてクーラーボックスなどに入れて鮮度を落とさないようにしたい。また、頭や背ビレの棘が鋭いので、さばくときに手を怪我しないよう気をつけること。
どんな料理にも合うが、刺身にすると取れる身が少なくなってしまう。ブイヤベースや味噌汁など、汁物にするとダシが出ておいしくいただける。小型の魚は唐揚げ(写真上)や煮付け(写真下)にするのがお勧めだ。二度揚げすれば骨も食べることができる。また、煮付けで残った骨やゼラチン質の部分に熱湯を注ぐと、おいしいスープがとれる。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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