アカエイ【赤鱏】

アカエイ【赤鱏】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類トビエイ目アカエイ科アカエイ属
  • 学 名Dasyatis akajei
  • 英 名Red stingray
  • 別 名アカエ、アカマンタ、エブタ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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一般的な魚類が「硬骨魚綱」に分類されるのに対し、エイやサメなどの仲間は全身の骨格が軟骨で構成されていることから「軟骨魚綱」に分類される。
エイの仲間は500種以上が知られており、アカエイ科には6属70数種が分類され、そのうち日本近海には3属14種が棲息している。アカエイ属には本種のほか、ホシエイ、ヤッコエイなどがいる。
本種は、北海道南部以南の日本各地に分布し、東南アジアまで広く棲息する。


特徴

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体形は上下に平たく、菱形に近い体から吻(ふん)がやや尖って突き出し、長い尾が伸びている。背側の中央には、尾まで小さな棘が並ぶ。
背側は赤褐色で、腹側は白色。目の周辺、ヒレや尾の辺縁部は黄色から橙色。外敵から身を守るために、背面の色は海底と同系色になり擬態効果を発揮する。ウロコはなく、体表は粘膜質で覆われている。
尾はしなやかな鞭状で、中ほどに毒線を持つ約10cmの棘が1~2本ある。また、棘は釣りバリのようなカエシのある鋸歯状で、刺さると抜けにくい。
背側に位置する目の後方には噴水孔があり、腹側には鼻孔、口(写真の黄円内)、5対の鰓裂(さいれつ)(写真の赤円内)がある。口の周囲には「ロレンチニ瓶」と呼ばれる電気受容器を備え、この器官でエサとなる獲物が発する微弱電流を察知できる。このため、背面の目は獲物を探す際にはそれほど大きな役目を果たしておらず、主に外敵を見張るためのものと考えられている。
尾の先端までの全長は最大で2m、体重100㎏超に成長する。寿命は15年程度とされる。


性質

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比較的温かい海の内湾や沿岸部の浅場、河口部などの砂泥底に棲息し、普段は砂中に潜り、目と噴水孔と尾だけを出している。
食性は肉食で、貝類、甲殻類、小魚、多毛類などを発見すると、平たい体で獲物に覆い被さってから丈夫な歯でかみ砕いてゆっくりと食べる。
卵胎生で、雌は体内で卵を孵化させ、春~夏頃に体長10cmほどの稚魚を5~10匹産む。稚魚の体色は淡褐色で、形状はほぼ親と同様。稚魚は行動が活発で海底付近を泳ぎ回るが、サメ類が天敵である。
アカエイは、水中で自ら向かって攻撃してくることはほとんどない。しかし、干潟や砂地、河口部などで立ち込んで釣りをする際などに誤って踏みつけたりして、驚いたエイに刺されることがよくある。
アカエイの尾にある毒腺に触れると激痛に襲われる。アレルギー体質の人は、アナフィラキシーショックに見舞われる場合があり、最悪の場合は死に至ることもある。そこまで至らなくても、数週間痛みが持続することもあるので、刺されたらすみやかに毒を絞って患部を水か湯で洗い、できるだけ早急に病院で治療を受けたい。なお、死んだものでも毒は残っているので、堤防上に放置されたり、浜に打ち上げられたりしたものでも、不用意に触ったり踏んだりしないようにしたい。


文化・歴史

エイの語源は、アイヌ語や東北地方では棘のことを「アイ」というのがエイに転じたという説がある。アカは見た目の通り、体色が赤褐色であることからである。
非常にポピュラーなエイなので、単にエイ、エエと呼ばれることも多い。そのほかエブタ、エギレ、アカエ、アカヨ、アカマンタ、カマンタなどの地方名がある。
学名のakajeiは、和名が由来となっている。
釣りでは外道扱いされがちなアカエイだが、水族館ではマンタなどと並んでなかなかの人気者だ。


釣り方

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アカエイ釣りの好シーズンは、水温が上昇する初夏~秋。この時期になるとアカエイは夜間に活発にエサを追うため、夜釣りで狙うのが有利だ。
ポイントとしては、群れが集まりやすい河口周辺が狙い目。とくに、エサが溜まる流れの緩んだ橋脚まわりや消波ブロックぎわ、カケアガリなどを攻めてみたい。河口部では、上げ潮の時間帯が狙い目だ。
釣り方は、仕掛けをポイントにぶっ込んで置き竿でアタリを待つだけ。アカエイは付けエサを捕食すると一気に走ることがあるため、リールのドラグは緩めにしておきたい。取り込みには、超大型の玉網かギャフが必須。仲間がいる場合は、取り込みのアシストを頼むのが確実だ。

【投げ釣り】

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巨大エイをターゲットにするなら、タックルはイシダイ釣りや大ゴイ釣り用のものを流用する。10㎏超の大型エイを視野に入れるなら、ミチイトは最低でも10号以上を使うのが無難だ。ハリスはワイヤを使うのが確実で、スリーブで小さなループを作り、ハリやサルカンと結節する。ハリはカエシをプライヤーなどでつぶしておくと、釣り上げた後のハリ外しが安全だ。
エサは、イカや魚の切り身。小魚やエビなら、丸ごと口掛けなどで装餌すればOKだ。

【ライト投げ釣り】

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2㎏程度までの小型狙いなら、30号負荷の投げ竿にドラグ付きの大型スピニングリールの組み合わせでも十分に勝負できる。
オモリは遊動式にして、付けエサを口にしたアカエイに違和感を与えにくいようにするとよい。シンプルな一本バリ仕様として、ハリは丸セイゴの大型を使う。
付けエサは、イカの身を10×2㎝ほどの短冊にして、ハリにチョン掛けして使うか、冷凍キビナゴなどでもいい。


料理

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煮付け

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煮こごり

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唐揚げ

アカエイのクセのない白身は、かなり美味。漁獲されたものが店頭で売られている地域も少なくない。
釣って持ち帰る場合は、尾を靴でしっかり踏みつけ、ペンチなどで毒バリをカットしてからクーラーなどに入れて鮮度を保つ。時間が経つと、体内に含まれる尿素が発酵してアンモニア臭が強くなるので、鮮度のいいうちに食べたい。
新鮮なものは刺身、湯引きなどで、そのほかに煮付け、煮こごり、唐揚げ、ムニエル、フライ、酢味噌和え、味噌汁などさまざまな料理で味わえる。ヒレの軟骨は干して珍味に加工されたり、練り製品の原料にされることもある。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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