ハマフエフキ【浜笛吹】

ハマフエフキ【浜笛吹】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類スズキ目フエフキダイ科フエフキダイ属
  • 学 名Lethrinus nebulosus
  • 英 名Spangled emperor
  • 別 名タマン、タマミ、クチビ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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スズキ目フエフキダイ科にはコケノコギリ属、ノコギリダイ属、フエフキダイ属、メイチダイ属、ヨコシマクロダイ属の5属39種が認められており、うち5属28種が日本に分布している。
ハマフエフキが属するフエフキダイ属の仲間には、アマミフエフキ、キツネフエフキ、タテシマフエフキ、ヨコシマフエフキなど28種が知られている。そのほとんどは太平洋西部~インド洋の熱帯域に分布し、沿岸の浅い海で生活している。日本列島では千葉県以南、とくに沖縄に多く棲息しており「タマン」の名で親しまれている。


特徴

フエフキダイ属の魚は、その名が示す通り笛を吹くのに口先を突き出したような独特の顔つきが特徴だ。また、稚魚期の一時期を除いて、主鰓蓋(さいがい)骨よりも前の部分にはウロコが一切ない。
ハマフエフキは、全長は最大で90㎝に達する大型種。体型はタイに似て側扁し、比較的体高が広い。眼隔(がんかく)域は平たいか、またはわずかに膨出する。口内は鮮やかな朱色で、両アゴ前部には2対の犬歯がある。エラブタは短くて太く、低いこぶ状を呈する。
体側は赤褐色の地色に、ウロコ一枚一枚に淡青色の輝きが含まれ、まさに「Spangled emperor」=「スパンコールをまとった皇帝」という英名にふさわしい優美さがある。眼下の頬や吻(ふん)に淡青色斜走線が数本あるほか、胸ビレにも淡いブルー斑がある。また、胸ビレの上縁と腹ビレ前縁は淡青色となっている。
名称が似ているためフエダイ科の魚と混同されやすいが、フエダイ科に属する魚は頭部にウロコが多いことや口の中が赤くないことなどことから区別できる。


性質

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沿岸の岩礁や砂礫底、サンゴ礁域などのごく浅いところから、水深70m以深の深みまでに棲息している。食性は肉食性で、稚魚期は海藻に着く微小甲殻類などを、成魚は小魚・甲殻類・イカ・貝類・ウニなどを捕食する。
沖縄における本種の産卵期は2~11月と長く、春と秋の2回の盛期が認められている。稚魚は尾叉長17㎜を超えた頃から、海藻が繁茂する水深3m以浅の浅海域に着底。その後、成長に伴って沖の砂礫底に分布域を移し、成長とともにさらに沖の深みに移動し、越冬する。成熟するのは3~4歳。雌性先熟の性転換が見られ、寿命は20年を超えるといわれている。
琉球諸島や小笠原諸島では体長50㎝以下の個体がよく見られるが、四国・九州では、70~80㎝の大型が多い。このことから、琉球諸島などが主分布域であり、大型になると南日本の太平洋沿岸を回遊してくると推測できるが、くわしい生態については解明されていない部分が多いのが現状である。


文化・歴史

ハマフエフキという名は、日本の魚類を体系的にまとめながら初めて標準和名を付けたジョルダン・田中・スナイダーによる『日本産魚目録』(1913年)の中にも登場しており、古い名前であることがうかがえるが、その由来については不明である。
関東ではなじみが薄いが、沖縄地方では「タマン」という名で親しまれており、グルクン(タカサゴ)と最後まで県魚の地位を争ったといわれるほどポピュラーな魚である。また、県内では重要魚種の一種とされ、1976年から種苗生産研究が、そして1984年から人工種苗放流技術開発の調査研究が行われてきた。
九州・関西地方では「タマミ」と呼ばれることが多く、ほかに「タマメ」「タバミ」「タバメ」という呼び名もある。次いで多いのが「クチビ」「クチミ」という呼び名だ。口の中が赤いため、「口緋」もしくは「口火」の意味であると推測される。
本種は「フエフキダイ」、もしくは、省略して「フエフキ」と呼ばれることも多い。しかしながら標準和名のフエフキダイはハマフエフキとは別種であり、全長は最大で40㎝ほどにしかならない小型のフエフキダイ科の魚である。フエフキダイは、生態や生活史がほとんど解明されてない謎の魚であり、なかなか目にすることができないのだが、本種との混乱がしばしば見られる。一番多い混乱は、沖縄の「タマン」がハマフエフキで、九州や関西地方の「タマミ」がフエフキダイだと思われていることである。また、魚図鑑などでも両種の混乱が見られるので注意が必要だ。


釣り方

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ハマフエフキは伊豆半島や房総半島などの関東圏でもときどき釣れるが、数と型を狙うなら伊豆諸島や九州、南西諸島が有望だ。なかでも沖縄では、3~5月上旬に岸釣りで大釣りできることが知られており、地元の釣り人の心を熱くとらえている。また、リーフまわりを小型ボートで攻略するルアーゲームも人気だ。

【投げ釣り(テンビン仕掛け)】

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沖縄では海岸のほとんどがハマフエフキのポイントで、漁港周辺はもちろん、ビーチなどでも釣れる可能性がある。磯、防波堤、砂浜いずれでも、テンビン仕掛けによるぶっ込み釣りがポピュラーだ。
竿はタマン(ハマフエフキ)専用竿が望ましいが、5~10号程度の磯竿やイシダイ竿などでも代用できる。ミチイトにナイロンを巻くときは大型のスピニングリール、PEラインを巻くなら中型のスピニングリールが使いやすい。両軸リールを使うベテランもいる。ハリス(針を結ぶ釣り糸)は、砂浜では8~16号、岩場では12~20号と使い分けるとよい。エサはアオリイカの短冊、カツオの腹身、小型のタコやボラなどが使われる。
ハマフエフキは、日中は沖の深みで過ごし、夜になるとエサを獲りに浅場に徘徊してくるため、日中よりも夜釣りに分がある。初めてのポイントでは、昼間の干潮時に下見をしておくとよい。地元の釣具店や釣り人、情報誌などから情報を得るのも手だ。
仕掛けをポイントに投入後、魚信があっても見送って力強い締め込みを待つのがコツ。十分に竿が引き込まれてからイトを巻き取ろう。

【投げ釣り(捨てオモリ仕掛け】】

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磯の場合、潮通しのよい砂混じりの岩礁帯で、干潮時には干上がるような浅場が好ポイント。根掛かり(海底の障害物に針、オモリが引っかかる)が多い場所での釣りなので、捨てオモリ方式の仕掛けが一般的だ。
タックル(竿、リール、糸を含む道具一式)は、5号程度の磯竿やイシダイ竿などに、両軸リールの組み合わせ。ハマフエフキの引きは強烈なので、竿を取られないよう尻手ロープを付けておくことをお勧めする。
仕掛けはタマンバリを2本使った胴付き仕様とし、捨てイトを介してオモリをセットする。夜釣りではハリのチモト(針の根元)に夜光玉をセットするのも有効だ。エサは、ムロアジやイカの短冊がポピュラー。幅2㎝ほど、長さ13㎝ほどと、やや大ぶりに切ったものを付けてやるといい。イカナゴの房掛けやヒイカの1パイ掛けも使われる。

【ボートルアーフィッシング】

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沖縄では、ボートやカヤックでハマフエフキを狙う釣り人も多い。釣り方のスタイルは人それぞれだが、できればタックルはライトなものと、大物用のパワフルなものの2組を用意するのが理想だ。
図は大物狙い用のタックルで、ロッドはシイラや青物狙いに準じたものを使用する。小〜中型狙いなら、シーバスやエギング用のロッドでも流用可能だ。レンタルタックルを準備している船宿もあるので、釣行前に問い合わせよう。
いずれの場合も、ルアーは14㎝程度までのジグミノー、ミノープラグ、シンキングペンシルなどを使用。2~3インチのバグ系(ザリガニをモチーフにしたもの)ワームをセットしたテキサスリグなども実績がある。あらゆる状況に対応できるように、さまざまなタイプのものを用意したい。
釣り方は、ハマフエフキが潜んでいるであろう根まわりやリーフエッジを流しながら攻めていく。ルアーをドリフト(流れに乗せてルアーを移動させる釣り方)させたりトゥイッチング(竿を動かし、ルアーに不規則な動きを加える)を入れたりしながら、ヒットパターンを探っていこう。この場合、アクションの途中に食わせの間を入れてやると効果的だ。
ハマフエフキは、根などの障害物に逃げ込む習性があるので、ヒットしたらある程度強引に寄せてくる。

製品例
シンキングペンシル


料理

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ハマフエフキの旬は夏。よく締まった白身で、ほどよい脂があり、クセもないのでどんな料理でもおいしくいただける。刺身、塩焼き、ムニエル、ポワレ(写真)、汁物、鍋物など、好みに合わせて楽しんでみたい。
ポワレは、ホウレンソウを炒めて塩コショウで味付けし、皿に盛っておく。フライパンにオリーブ油とニンニク入れて熱し、ハマフエフキの切り身を焼いてホウレンソウの上に盛る。煮詰めたバルサミコ酢とオリーブ油を身にかけ、ガーリックチップを添える。
なお、南方の魚はシガテラ毒をもっている恐れがあるが、フエフキダイ科はキツネフエフキにマーシャル諸島でのシガテラ中毒が記録されているだけで、国内での報告はない。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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