酢締めを短時間にして、刺身風の仕上がりに! 締めサバ
小さな歯が並んでいることから「小歯」の名がついたサバ。かつては、たくさん獲れた大衆魚で、傷みも早いので、売るときに数をごまかす行商人が多かったことなどから、
数をごまかすことを「サバを読む」と言うようになった。このように、日本人にはなじみ深い魚だが、ことわざの起源にもなっているように、足の早い魚の代表なので、しっかりと血抜きすることと、持ち帰る際の保存の仕方が大切だ。
マサバは、「寒サバ」と呼ばれる冬が旬。一方、夏場に多く獲れるゴマサバは、マサバにくらべて脂分が少なく、季節による味の変化もそれほどない。
ゴマサバは、サバ節や缶詰などに加工されることが多いが、今回紹介する締めサバもゴマサバのほうが向いているかもしれない。しっかり処理して持ち帰れば、釣り人の特権でもある非常に美味しい料理が楽しめるので、ぜひ試してみてほしい。
塩や酢の味をほとんど感じない生に近い仕上がりを楽しもう。
さばき方・作り方
ここで紹介する締めサバは、酢で身を白く固くした長期保存向きのものとは異なり、生に近い仕上がりで、脂の乗ったサバ本来のうまさを楽しめる。ポイントは、釣れた直後に行う船上での下処理をしっかり行うこと。
なお、身割れしないよう、さばき方やその後の処理にも気を使いたい。
[材料](4人前)
サバ(35cm級) 1尾
塩 適量
酢 適量
大葉 適宜
薬味(ショウガ、ミョウガ)適宜
①釣れた直後に、エラの部分にナイフを入れ、バケツに汲んだ海水のなかに入れて血抜きしたあと、たっぷりの氷と海水が入ったクーラーボックスに入れる。
②海水氷のなかに1時間ほど入れておき、身が安全に硬直したら、頭を落とし、内蔵を取って、三枚におろす。
③おろした身を、密封容器に入れたたっぷりの塩のなかに埋め、冷やして持ち帰る。これはあくまで、塩に水気(ドリップ)を吸わせて身を締めるための工程となる。
④三枚におろした身は、少なくとも3時間は塩漬けにしておく。半日ほど漬けたままでも塩辛くはならない。ドリップが十分に抜けているのを確認したら、真水(流水)で塩を洗いながす。
⑤ペーパータオルなどで、水洗いした際の余分な水分を拭き取る。身割れしないように丁寧に扱うこと。
⑥パットなどに酢を入れて身を浸す。上にペーパータオルなどを乗せれば、少ない酢でも十分に漬かる。酢の味を染み込ませるのが目的ではないので、酢の種類は何でもよい。
⑦酢につけたまま冷蔵個のなかで30分程度置いた身を取り出し、腹骨をすきとり、毛抜きで血合い骨を抜く。血合い骨を抜く際は、身割れしないよう頭のほうへ引き抜くこと。
⑧頭のほうから薄皮をていねいに剥ぐ。このあと、薄い刺身状に切り、おろしショウガ、千切りにしたミョウガなどの薬味を添えて出来上がり。酢、塩ともほとんど感じない刺身風の仕上がりなので、その日のうちに食べるのがオススメ。
サバの焼きみそ風
素焼きにしてフレーク状にほぐしたサバやカツオ、マグロなどに、合わせみそ、みじん切りにした青唐辛子、細かく切った大葉(たっぷり入れるのがポイント)を混ぜ、
アルミホイルなどに載せて、オーブントースターなどでサッと焼いたものを「焼きみそ」という。みその塩気と青唐辛子のピリッとした辛さがご飯にピッタリで、おにぎりの具にも最適。
夏バテしやすい時期でも食が進む一品だ。今回はこの料理をヒントに、焼きみそ風のサバの煮焼きを作ってみた。
[材料](4人分)
サバ(35cm級) 1尾
煮汁 適量
(酒、砂糖、しゅうゆ、みりんを各同量、みそ少々)
青唐辛子、大葉 適量
※大葉をたっぷり入れるのがポイント
作り方
①少量のみそを加えたサバの煮付け(みそ煮でも可)を作り、小口切りにした青唐辛子と、みじん切りにした大葉を加えて、ひと煮立ちさせる。
②煮上がった切り身を網に乗せ、軽く焼き目を付ける。これを皿に盛って煮汁をかけ、素焼きにした青唐辛子を添えて出来上がり。焼きみそ、煮焼きとも好みで夏の香味野菜(ミョウガ、ニンニク、ショウガ、木の芽など)を加えてもおいしくできる。
【料理監修:森山 利也】
千葉県富津市で居酒屋「はいから屋」を25年営み、現在は築地場外市場で曜日限定の店「JOJO BAR」をプロデュース。自ら店に立ち旬の魚や自家製の野菜など、新鮮な食材を使った様々なメニューを楽しめる。
そして包丁捌きの基本や海に関わることを学べるリアル「森山塾」も主宰。
また、ベテランの釣り人として各方面で活躍し、豊富な経験と見識を持つ。
上記は森山氏がビギナーにも無理なく作れるものとして紹介していただいたおすすめ料理だ。
【協力:株式会社 舵社】
参考本:スクラップブック of 釣果料理
http://www.kazi.co.jp/public/book/bk04/5126.html
4人の達人が贈る、全38魚種、144種のレシピを掲載
『ボート倶楽部』の連載や特集記事の中から、さと丸、森山塾長、Mr.ツリック、ウエカツ水産の4人が書いた釣果料理の記事だけを厳選&抜粋して集めた単行本。
釣った魚をおいしく食べる達人たちのおすすめ料理を作れば、みなさんの家の食卓が豊かになること間違いなし。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)