北海道南部から九州までの各地の沿岸域に分布している。
メバル属は種類が多いが、本種も最近の研究調査によって3種類の遺伝的に異なる型があることがわかった。その外観上でわかりやすい違いは、胸ビレの軟条数がA型は15本、B型は16本、C型は17本となっていること。2008年にはそれぞれの和名も提唱され、A型はアカメバル、B型はクロメバル、C型はシロメバルとしている。個体数としては、釣り人が一般に「黒メバル」と呼んでいたC型(シロメバル)が多く、A型とB型は少ない。
なお、本種の亜属としては、ウスメバルやトゴットメバルなどの仲間がいるが、これらは深場で釣れることが多いため、釣り人からは総じて「オキメバル」と呼ばれている。
メバルの見釣り(入門者向け)
- 分 類カサゴ目フサカサゴ科メバル属
- 学 名Sebastes inermis
- 英 名Darkbanded Rockfish
- 別 名クロメバル、メバチ、メマル
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
体形はタイのように平べったく側扁し、口は受け口で大きい。特徴的なのは、その大きな眼。ほかの魚と比較して視力が優れており、とくに日没後の光の乏しい中で色彩を見分ける感覚は抜群。このため、暗闇の中でも、保護色のエビなどのエサを発見できるといわれている。
尾ビレは後縁が真っ直ぐに近く、遊泳力はそれほど強くはない。背ビレの棘は鋭く、不注意で指などを刺されると数日間痛む場合がある。
夜行性が強く、日中は岩礁などに身を潜め、夜間になると積極的にエサを追う。ただし、穏やかな曇り日や海水の濁った日には昼間でも活発にエサを取ることが多い。
また、メバルは比較的警戒心の少ない魚で、群れの中の1尾が釣り上げられても、群れが散ることは少ないようだ。このため、メバルが1尾釣れた場所では、同じスポットで次々とハリ掛かりしてくるケースが多くなる。
食性は肉食で、主に多毛類(ゴカイなど)や甲殻類、アミ類などを好むほか、小型の魚も捕食している。
メバルは、ウミタナゴなどと同様の卵胎生の魚としても知られる。11~12月に交尾をしたメスは胎内で受精卵を育て、1~2月になると流れが緩やかな藻場で体長3~4㎜の仔魚を数千尾放出する。
産まれたばかりの仔魚は、内湾の藻場でプランクトンなどのエサを取りながら成長。体長は1年で8㎝前後、3年で14㎝前後、5~6年でようやく20㎝ほどと、それほど成長のスピードは早くない。ときどき釣り上げられる体長30㎝を超える個体は、10歳以上の老成魚だと思われる。
メバルは、縄文時代から重要な食料だったとされ、実際、全国各地の縄文遺跡からクロダイやスズキなどとともに、メバルの骨も多数出土されている。
江戸時代には、マダイ同様に美味な魚として珍重され、祭事に供されることも多かったようだ。現在でも、石川県能登地方で国の重要無形民俗文化財に指定されている「あえのこと」と呼ばれる伝統行事において、神事の御膳にメバル(当地では「ハチメ」と呼ばれる)が供されている。
また、メバルはほかの魚と比較して眼が飛び出しているため「眼張」の字が当てられているが、江戸時代に編纂された百科事典『和漢三才図会』には、「蟾蜍(せんじよ)の化する所なり」との記述があって、その眼の大きさから「せんじよ=ヒキガエル」の化身と見立てていたようだ。
メバルは海底付近で、天に向かってエサを待ち受ける姿勢をとることが多いため、新潟県や山形県ではテンコ(天口)、紀州ではアオテンジョウ(青天井)などと呼ばれることもある。
子供と一緒に楽しめる「見釣り」 / 入門者向け
一般的な釣りでは、水中の見えない魚を狙うのが普通だ。しかし、釣りをやったことがない人にとって、魚がいるのかどうかわからない状態で集中力を持続させるのは難しい。そこで提案したいのが、見えている魚を狙う「見釣り」。相手は体長10センチにも満たない小魚たちだが、この見釣りは想像以上に楽しめるのだ!
小魚の「見釣り」が、釣りの上達に繋がる
【メバル】 海釣りの対象魚としては、かなりの人気を誇るメバル。大型はなかなか釣るのは難しいが、港内に群れている小型のメバルは比較的イージーに釣ることができる。
たとえば、釣り人がひとりもいない冬の漁港。一見、何にも釣れなさそうに思えるが、試しに足元の水の中をじっくりと観察してみてほしい。最初は何も発見できないかも知れないが、3分ほどじっと水中をのぞいていると、これがビックリするのだが、じつにいろいろな小魚たちが姿を現してくれることが多いのだ。小メジナや小メバルなどのほか、南の島から海流に乗ってやってきた熱帯魚を発見することも珍しくない。
そして、この見えている小魚をあえて釣りの対象とすることによって、意外な場所に魚が隠れていることやエサの捕食方法、使いやすい仕掛けや的確なエサの使い分け方などを知ることができる。今後の釣りの上達にも、役立つこと間違いなしなのだ。
また、釣れた小魚は基本的にリリース(生きたまま逃がしてやること)前提で楽しみたいが、逃がす前に小型の水槽などに入れて観察してみることをオススメする。とくに子供の場合は、自分が釣った魚をよく観察することで、いろいろなことを発見するものだ。魚の目の位置や口の大きさ、体やヒレの動かし方、体色の変化など、大人では気づきにくいことをどんどん発見することで、これも将来的に釣りの上達につながるのである。
その他、見釣りの主な対象魚
【チョウチョウオ】 こちらも季節回遊魚で、夏以降、本州沿岸の小磯の潮だまりや港内などで見ることができる。体長は最大で20センチ。見た目に美しく、観賞魚としても人気だ。
【カゴカキダイ】 チョウチョウオの近縁種。季節回遊魚というわけではなく、本州中部以南で一年中見ることができる。体長20センチぐらいまで成長するが、幼魚の頃は潮だまりや港内の浅場でよく見かけられる。
【スズメダイの仲間】 オヤビッチャ同様の季節回遊魚の仲間。写真は「シチセンスズメダイ」と呼ばれる種類で、文字通り、横縞が七本ある。
【ニシキベラ】 小型のニシキベラは港内に群れていることが多いので、ベラの仲間ではもっとも釣りやすい。
ポカポカ陽気の港内が狙い目
見釣りに適している季節は、比較的水が澄みやすい冬。オヤビッチャなどの季節回遊魚は水温が低くなると姿を消してしまうとされているが、昨今の温暖化のせいか真冬でも普通に泳いでいる場所が増えている。もちろん、海水の透明度が高い場所なら一年中、見釣りを楽しむことが可能だ。
釣り場としては、足場の安全な漁港の港内がオススメ。ポカポカ陽気で海が凪(波がないこと)の日なら、ファミリーやカップルなどで楽しく過ごせることだろう。逆に、海が荒れている状況では、見釣りはオススメできない。また、どこの港でも釣りが禁止になっていないことを確認し、駐車場所も含めてマナーを守って楽しみたい。もちろん、ライフジャケットは必着だ。
使用する竿
見釣りに使う竿は特別なものは必要ない。釣り具量販店などで格安で売られている淡水小物釣り用の軽量な竿でバッチリだ。長さは2.5〜3mほどでいいだろう。
完成仕掛けが便利
見釣りで使う仕掛けは、シンプルなものほどいい。具体的には、川のフナなどを釣るためのウキ釣り仕掛けがオススメだ。近年は淡水の小物釣りが人気なので、釣り具量販店に行けばウキやオモリ、ハリなどのすべてのパーツがセットされた「完成仕掛け」が販売されているはず。これを利用すれば、釣りが初めての小学生でも気軽に楽しめるはずだ。なお、基本的にこの釣りでは小魚を相手にするので、ハリは小さめのものが良い。川釣り用の完成仕掛けの場合、袖型バリの3号程度がセットされていることが多いので、別途、袖型バリの1〜2号を入手しておこう。
仕掛けのセット方法
チチワ結び
自動ハリス止め
完成仕掛けを使う場合、覚えておきたいことが2つある。ひとつは、仕掛けを竿先にセットする方法。これは、「チチワ結び」と呼ばれる方法が一番簡単で確実だ。結び方は5分ほど練習すれば小学生でもマスターできるレベルなので、今後、自分で仕掛けを作れるようになるためにもぜひ覚えておこう。なお、チチワ結びを作る場合、仕掛けの全長と竿の長さが同じぐらいになるように調整したい。もうひとつは、ミチイト(竿先に結んだ糸のこと)の下端に結んである金属環にハリスをセットする方法。ハリスというのはハリを結んである糸のことで、ハリを交換する場合はハリスごと取り替えるのが簡単だ。金属環にはいろいろな種類があるが、淡水小物用の完成仕掛けでは「自動ハリス止め」というタイプを採用していることが多い。この場合、写真のように自動ハリス止めの先端部分にハリスを斜めに挟むだけで簡単にセットできる。ハリスの長さは20センチぐらいでOK。セット後は強めに引っ張ってみて、ハリスが外れないことを確認しておこう。
エサの種類
エサの種類はいろいろと使えるが、釣りが初めてなら「オキアミ」と呼ばれるエビの仲間を使ってみると良いだろう。これは、釣具店でも普通に売られているポピュラーな海釣り用のエサ。小魚の見釣りの場合、これをハサミで米粒大のサイズに小さくカットしておくと食い込みが良くなる。ハリに付けるときは、写真のようにハリ先に刺すだけでOK。ハリが見えていても、魚は問題なく食ってくる。このほかのエサとしては、スーパーなどで売っているシラスの釜揚げも良い。これをハサミで長さ3ミリほどにカットしてハリ先に刺すだけだ。ほか、淡水の小物釣りのエサとして釣具店で売られている「練りエサ」もバッチリ使える。海中でゆっくりと溶けて魚の食い気を増進させる効果もあるので、利用価値大だ。
狙ってみたい主なポイント
見釣りは、文字通り水中の魚を見ながら釣るため、水面と目線の距離が近いほうが楽しめる。具体的には、水面から足場までの高さが1m程度の港内の岸壁が良いだろう。また、港内奥にある船下ろし場(スロープ)も狙い目。海底の地形に変化があり、エサも豊富な場所なので意外と小魚が集まりやすいのだ。
ウキ下の調整方法
ウキ下というのは、ウキから付けエサ(またはオモリ)までの長さのこと。通常、この長さは水面から魚が泳いでいる水深までの距離と同じにするのが基本だ。ウキ下の調整方法は、ウキのゴム管部分を持ってラインをスライドさせるだけでOK。ちなみに、通常のウキ釣りでは魚がエサをくわえた時に表れるウキの変化に応じてアワセ(魚をハリ掛かりさせること)の動作を行うが、見釣りの場合はダイレクトに魚の動きが見えるため、ウキはあくまでもウキ下調整のためのアイテムと心得よう。
見釣りのテクニック
見釣りの方法は超簡単。仕掛けを足元の水中に下ろし、付けエサを魚の目の前まで運んでやるだけだ。食い気のある魚なら、エサを発見するとすぐに口にくわえるので、そのとき竿を軽く立ててやると魚の口にハリが掛かってくれる。そのまま竿をさらに立て、魚を水面から抜き上げればOKだ。しかし、昔から「見える魚は釣れない」と言われているように、状況によってはすぐにエサに食いつかないことも多い。そこでいろいろと工夫していくのが、この見釣りのおもしろさでもある。まず、頭に入れておきたいことは、小魚の群れの中にはいろいろな性格の個体がいるということ。臆病な魚もいれば、大胆な魚もいる。エサにすぐ近寄ってくるせっかちな魚もいれば、とりあえずは遠巻きに見ている魚もいるわけだ。そして、見釣りではそれら個々の魚たちをリアルに観察できるという大きなアドバンテージがある。エサに興味を示すのになかなか食わない魚に対しては、まず「誘い」を試してみよう。仕掛けを軽く上下させたり、横方向にゆっくりと引っ張ってみる。その誘いの幅やリズムがうまくマッチしてくれれば、とたんに魚がエサを口にすることも多いのだ。ただし、あまり急激な誘いは逆効果。魚の反応を確認しつつ、あくまでもスローな誘いを心がけよう。エサの大きさや種類を変えてみるのも有効だ。それまで米粒大の大きさのエサだったら、もっと小さくしてみるなど工夫してみたい。また、オキアミを2〜3匹ほど指でつぶして撒いてみると、その匂い効果で魚の食い気がアップすることも多い。さらに試してみたいのが、群れから少し離れた位置でエサを眺めている孤独な魚を狙ってみること。そんな遠慮がちな魚に限って、目の前に突然エサが現れると思わずパクリとやってしまうのだ。これらのいろいろな工夫をしているうちに、いつしか小物釣りに熱中している自分に気づくことだろう。
刺身
煮付け
ブイヤベース
メバルは上品な味を楽しめる白身魚。“春告魚”とも呼ばれるように、春に釣れるものが、ほどよく脂がのって好まれているが、釣ったばかりの新鮮なものなら季節を問わずにおいしく食べられる。
料理法としては、煮付けや塩焼き、刺身、蒸し物、塩釜焼きなどの和風レシピが人気だ。また、唐揚げしたものに野菜あんをかけたり、紹興酒で酒蒸しにする中華料理もおいしい。さらに、エビや貝などと一緒に煮込んだブイヤベースといった洋風のレシピにもメバルはマッチする。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)