マダイのタイラバ入門(船釣り)・前編

マダイのタイラバ入門(船釣り)・前編
  • 分 類スズキ目タイ科マダイ属
  • 学 名Pagrus major
  • 英 名Red Seabream
  • 別 名ホンダイ、オオダイ、チャリコ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

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釣り方

◆タイラバとは

 タイラバもしくはタイカブラと呼ばれるこの釣り具は、もともとマダイ釣りの漁師が使う道具が進化したものだ。
 オモリ付きのハリにエビを付けて使用されていたが、一部の地域でエサの代わりに、ビニールやラバーを使用してマダイを狙うようになり、これが進化して今日のタイラバとなった。
 今や海のルアーとして欠かせない存在のタイラバであるが、ルアーとしての歴史は浅く、今もなお進化の途中だ。
 釣れる理由、メソッドには諸説あり、それが商品開発やテクニックに広く反映され、さまざまなバリエーションが展開されているのが面白いところでもある。
 もともとはマダイ用の漁具であるが、タイラバで釣れる魚の種類は多く、ボトムから表層近くまで、根魚から青物までと広範囲・多魚種で効果を発揮するルアーでもある。
 釣り方の基本は海底まで沈めて巻き上げるだけ。多くの場合は向こうアワセで魚が掛かるのを待ってからのやり取りになるので、特別な技術を持っていない初心者にとっても、始めやすい釣りである。突き詰めればテクニックがあるのだが、とりあえず巻くだけで釣りになるのが特徴だ。
 タックルや仕掛けがシンプルで扱いやすいうえに操作が簡単。操作しながら底取りや潮流への対応など船釣りの基本テクニックを覚えることができるので、ルアーに限らず、海の船釣りを覚えるためのファーストステップとしても最適な釣りといえる。
 タイラバには、アタリがあってもフッキングしにくく、フッキングしてもバレやすいといった弱点があった。仕掛け、タックル、テクニックが進化するにつれ目立たなくなったが、対処を怠ると千載一遇のチャンスを逃すことにもなりかねないので注意が必要だ。

◆タックル

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 海底から一定のレンジまで仕掛けの上げ下げを頻繁に行うため、巻き上げ力の強いベイトタックルを使用するのが一般的だが、スピニングタックルを使用しても問題ない。
 専用品が多く出回っているのでその中から選択するのが基本だが、ライトジギング用のタックルや、ブラックバス用タックルの流用も可能。しかしソルト対応品でない場合はサビに弱いので注意すること。特にリールには気を配ること。
 ランカークラスのマダイとのやり取りはもちろん、思いがけない大物との出会いも想定して、パワーにはある程度の余裕もほしいところだ。取り込みに手間取って他の釣り人に迷惑をかけないようにある程度のパワーがあるものを選んでおくことはマナーでもある。

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◯リール
 使用するラインが150m以上巻けるベイトタイプを選択するのが一般的。ブラックバス用のリールなども使用可能だが、流用する場合は、海水での使用が可能なものであることを確認しておこう。
 ベイトリールが選ばれる理由は、一定のスピードで仕掛けを巻きとりやすく、巻き上げが楽にできるパワーを持っているからだ。1日中フォールと巻き取りを繰り返すことを考えるとこのタイプのリールが使いやすい。
 誘いの早さや手返しの良さがこの釣りにとって重要なので、ハンドル1回転で60~80㎝のラインが巻き取れるものを選択する。ギア比5:8以上が望ましく、巻き取り抵抗の大きさが気にならなければギア比6:3前後のハイギアタイプをおすすめする。
 ドラグは微調整が効き、滑り出しが滑らかなものが理想。滑らかなドラグは急激な衝撃からラインやタックルを守ってくれるだけではなく、マダイ特有の激しい首振りの衝撃を和らげてくれるので、バラシの軽減にもつながる。
 さらに、バイトの瞬間にラインを適度に送り出すことで、魚に与える違和感を減らせ、ファーストバイトでフッキングしなかったときの追い食いも期待できる。その際、スムーズなリーリングを長く続けることもできるのでフッキングの確率をさらに上げられる。
 リールの最大ドラグ力は4㎏は欲しいところ。ドラグの設定については、使用するリーダーラインの強度の1/3~1/4の重さ、もしくは、1~1・5㎏の負荷が掛かったところで滑りだすようにしておけばいいだろう。

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長い星型のレバーがドラグ調整用で、銀色の丸型がメカニカルブレーキ調整用。

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メカニカルブレーキは、スプールを指で動かしたときに、ぐらつかない程度まで締め込む。締めすぎはフォール速度が遅くなるので注意。

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竿先を下げグリップを脇に挟むのが基本のフォーム。竿先を下げることで、巻き抵抗が軽減され、グリップを脇に挟むことで、手首と腕が楽になる。長時間テンションを保てるように、なるべく楽な態勢をとるようにしよう。

◯ロッド
 マダイの口にハリ先が触れたとき、弾かずに口元に引っ掛けておけるしなやかな穂先と、いざフッキングとなれば魚の口にハリを突き通すのに必要なブランクの反発力、そしてやり取りの際に大物マダイを浮かせるだけのバットパワーが求められる。
 また、マダイ特有の首を左右に激しく振る動きをうまくいなしてバラシを減らしてくれるしなやかさも欲しいところだ。
 バラさないという点では、長くて柔らかいロッドが有利なのだが、船の上での取り回しを考えると、2m前後のものが扱いやすい。
 操作性に目を向けると、グリップの長さも重要だ。リーリングをしたときにグリップエンドを脇に挟めるくらいの長さが理想で、こうすることでティップがブレない安定したリーリングと、大物とのやり取りの際の踏ん張りが効くことになる。
 巻き取り抵抗も含めると、ロッドに掛かる重量はアングラーにとってかなりの負担になる。1日釣りを続けることを考えてもグリップを脇に挟んでリーリングできるものを選んでおくほうが無難。
 ガイドについては、PEラインを使うことを前提に選ぶ必要がある。まずガイドリングはSiCであること。摩擦と摩擦熱でPEラインもガイドも傷みやすいのでこの部分にはこだわっておこう。特にバスロッドを流用する場合はゴールドサーメットのガイドが装着されていることがあるので注意すること。
 ガイドフレームの素材についてはステンレス以上の物ならば大丈夫。できればPEラインが絡みにくいデザインの物を選ぼう。

◆メインライン

 40~80gという軽い仕掛けを使うこの釣りは、潮流の影響を受けやすい。それを少しでも減らすために0・6~1号の細いPEラインがメインラインとして使用される。船釣り用のものなら、水深が分かりやすいようラインが色分けされているので使いやすい。
 ラインは、海中でなるべく直線状態であることが望ましい。伸びの少ないPEラインを使用している限り、仕掛けが少々遠くに流されてもラインが直線状態であれば、着底やアタリを捉えることは難しいことではない。ところが仕掛けが潮流の影響を受けて膨らんでしまうと、その感度は極端に鈍くなってしまう。
 一度このような状態になるとラインはさらに流れの影響を受けやすくなり、より大きく膨らんでいく。結果、アタリはおろか着底の感覚まで掴めなくなってしまう。
 着底の感覚が分からないのはこの釣りにとって致命的なことだ。タイラバが底に着いたままズルズルと引きずられていたのでは根掛かりによる仕掛けのロストが頻発してしまう。
運よく根掛かりしなかったとしても、しばらく底を引きずられていたタイラバはマダイに見切られてしまう。どちらの場合も釣果は望めない。
 潮流で仕掛けが流されること自体はさほど問題ではないが、ラインが膨らんで感度が鈍るのはいいことではない。そのためにもなるべく抵抗の少ない細いラインを選択するようにしたい。

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一定の長さで色分けされた船用のラインを使えば、水深やラインの入り方などの情報が掴みやすい。

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リーダーラインは素材が同じであれば流用も可能だ。

◆リーダーライン

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 細いPEラインをメインラインとして使用するこの釣りでは、リーダーラインの存在は欠かせない。一般的には2・5~4号のフロロカーボンもしくはナイロンラインを使用することが多い。
 メインラインに対して太すぎるリーダーを選ぶのもよくない。メインラインとリーダーの太さのバランスが悪いと、安定した結節ができないばかりかその部分がガイドに当たってラインが傷つきやすくなる。結果期待した強度は得られないことになる。
 太すぎるリーダーは、魚の食いにも影響する。太さの目安はPEラインの3~4倍の号数のリーダーを使用すると覚えておけばいいだろう。
 リーダーの長さは、1・5~2mが標準。少し長めにとっておいて傷んだ部分をカットしながら使い、海底がなだらかなら釣れる魚の長さプラス20㎝ほどになったら結び直すくらいでいいだろう。
 対して、根が荒い場所で釣るときはリーダーを長めにとるようにすることも忘れてはいけない。何度か仕掛けを上げ下げするうちに、根ズレなどでリーダーに傷がつく。傷の入る位置がメインラインから1m以内なら最初に取るリーダーの長さは2mは必要だ。

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タイラバのリーダーは傷みやすいので頻繁にチェック。人差し指と親指でリーダーをつまんで滑らせると、傷んだ部分に引っ掛かるのでそこをカットして結び直そう。魚を釣り上げた後、根掛かりしそうになったときはもちろんだが、フグやベラが多い場所ではアタリのたびにラインチェックが必要なこともある。

◆基本の操作

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フォールは、タイラバを海に入れた状態からスタート。落とし込む前にフックやネクタイの絡みがないか、上から確認すること。乱暴に落とし込むのは絡みのもと。キャストのときは着水前のサミングが有効。

 タイラバの基本操作は、いったん仕掛けを底まで落とし、一定の位置まで巻き上げたら再び底まで落とすという、簡単な操作の繰り返しだ。
 他のルアーフィッシングのようにアクションを加えることもないので、釣りの経験が少なくても親しみやすいのが特徴だ。

◯フォール
 リールのクラッチを切り、スプールを親指で押さえた状態でタイラバを少しだけ水中に沈める。この状態でフックやネクタイの絡みがないことを確認してからスプールを押さえた親指を離すとタイラバが沈み始める。
 着水のショックで、ネクタイとフックが絡んだりしないよう、タイラバの入水はなるべく静かに行うのがポイントだ。
 フォールを始めたら、ラインを止めたりせず一気に底まで落とし込む。途中で止めると潮流で仕掛けが流されてしまい、狙った場所に仕掛けを届けられないばかりかオマツリの原因になったり、ラインが大きく膨らむことで着底やアタリが分かりにくくなってしまうからだ。
 沈み始めたら回転するスプールを軽く親指で押さえる(サミング)しておくと、着底の瞬間の糸フケが少なく操作性が向上する。糸の出が止まった瞬間にスプールの回転が止まるのでフォール中のアタリも分かりやすくなる。
 サミングはフォールの速度が遅くならないよう、スプールに親指が触れるか触れないか程度で止めておくのが肝心だ。

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◯着底の判断
 フォール中、ラインの放出が止まるのが着底した合図になる。PEラインを使用していれば、ラインの伸びはほとんどないので、アタリとともに着底の感覚も掴みやすいはずなのだが、これが分からずに苦戦することも多い。
 一番の理由は船が絶えず移動していることにある。海上では止まっているように見える船でも、潮流や風の影響で結構な早さで移動している。
 潮が止まっていない限り仕掛けは常に流されるのが普通。仕掛けが船の下に真っ直ぐに沈むことはほとんどない。
 風の影響も潮の流れもないプールのような状態なら、仕掛けが着底したと同時にスプールの回転が止まりラインが出て行くこともないので、回転停止が着底の合図になるのだが、船が移動しラインが潮流の抵抗を受けて流されている状態では、仕掛けが底で一旦止まっても、その後の船の移動や潮流の影響で再びラインが引き出されることになる。これが着底の判断を鈍らせる要因だ。
 一連のスプールの動きは、フォールでラインが引き出されながら回転し着底の瞬間に一瞬だけ止まる。直後、船が移動したり海中の潮の流れでラインが引っ張られたりすることでラインが引き出され回転を再び始める。船の移動速度や海中の潮の流れが速いほど、着底を判断するタイミングは短くなる。
 タイラバが着底したことが分かりにくいときの一番の対処法は、仕掛けの重量を重くすること。フォールスピードが速く、ラインもより真っ直ぐな状態で引き出されるため感度も上がる。
 ただし魚がくわえたときの違和感やフッキングした後のバラしやすさを考えると、着底が分かる重さの中で、一番軽いウエイトを選ぶことが必要だ。
 フォールのときに仕掛けを潮上にキャストするという方法もある。仕掛けの着底が船の真下に近いほど、余分なラインの放出が少ないため着底の判断もしやすい。
 先の項目に登場したサミングも有効。サミングなしでは着底の瞬間も慣性でスプールが回り続けるのでそれを防ぐためだ。流れが速いとスプールが止まる時間が一瞬しかない。サミングはその瞬間を分かりやすくしてくれる。
 そのほか、ラインを細くして潮流の抵抗を減らしたり、おおよその水深を船長に訪ねて、ラインのマーカーを頼りに水深を把握したりという方法も有効だ。

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*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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