堤防でビギナーが手軽に楽しめる釣りのひとつが、専用の「投げ網」を使ったワタリガニ釣りだ。専門に狙う釣り人は多くないものの、ポイントに当たれば数釣りを楽しむことが可能で、その食味の素晴らしさも大きな魅力になっている。
カニ網釣り

- 分 類-
- 学 名-
- 英 名-
- 別 名-
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
●投げ網で獲れる主なカニの種類

【ガザミ】
甲幅20㎝以上になる大型のカニで、一般的にワタリガニというと、このカニを指すことが多い。北海道以南の日本全域で見られ、甲羅の左右に棘が張り出しているのが特徴。ワタリガニ科のなかではもっとも美味とされ、市場では高値で取引される。

【タイワンガザミ】
ガザミの近縁種で、ガザミより南方域に棲息。オスはハサミや脚先が青く、甲羅に白い縞模様がある。メスはガザミと区別しにくいが、ガザミはハサミ脚の長い節に棘が4本あるのに対し、タイワンガザミは3本しかない。食用としても人気。

【イシガニ】
日本全域に棲息するポピュラーなカニで、カニ網でもよく釣ることができる。甲幅10㎝ほどと小型で市場価値は低いが、蒸しガニや味噌汁にすると美味。

【ヒラツメガニ】
日本全域の外洋に面した砂底地に棲息している。楕円形の甲羅の中央に「H」形の模様があるため、「エッチガニ」とも呼ばれる。甲幅10~12㎝程度に成長する。
●ワタリガニが釣れる場所と季節

ガザミやイシガニは比較的流れの緩やかな場所を好むので、内湾の岸壁や堤防からが釣りやすい。一方、ヒラツメガニなどは潮通しのいい砂底のエリアに棲息しているため、外洋に面した砂浜が好フィールドとなる。
季節的には一年中狙うことができるが、とくに初夏から秋にかけての高水温時はチャンス。ガザミのオスは夏、メスは冬が美味とされる。
●使用する道具

【竿、リール、ライン】
投げ釣りに使う仕掛けのオモリは20~30号が一般的で、さらにエサの重量が加わるため、これを無理なくキャストできる竿が必要。遠投用の投げ竿が理想的だが、釣具店で安価に売られている万能投げ竿でも大丈夫だ。長さは3.5〜4mほどが目安。リールは中型以上の大きさのスピニングタイプをセットし、ミチイトとしてナイロンの5〜7号を巻いておく。

【ライフジャケット、ほか】
堤防でも砂浜でも、安全のためにライフジャケットは必ず着用しよう。また、カニをつかむためのトングや爪を折るためのプライヤー、カニをキープするためのバケツやクーラーボックスなどもあると便利だ。
●カニ釣りの仕掛け

カニ釣り仕掛けのシステムはシンプル。ミチイトに市販のカニ網を大型スナップサルカンを介してセットするだけだ。
●カニ網の種類

一般的に市販されているものは、ほとんどがこのタイプ。オモリは20~30号で、網の長さは50㎝前後。これに目の細かいネット状のエサ袋が付いている。写真のカニ網は、エサ袋がつねに網の中心にくるようにリング状のもので固定されているが、これはエサに寄ったカニを確実にキャッチするための工夫。
●エサの種類と使い方

匂いの強いサンマなどの青魚は、カニに強烈にアピールする。ブツ切りにしたものを3切れほどエサ袋に詰めて使う。また、魚の内臓や頭などのアラも良質のエサだ。ほか、鶏のレバーを使う人もいる。

袋に詰めるエサは多いほどアピール度は高いが、投入時に竿が耐えられる程度の分量に調整しよう。重過ぎると投げられなくなってしまう。エサ袋の口は糸で縛るタイプが使いやすい。
●カニ釣りの主なポイントと釣れる条件

【地形の変化や障害物】
ワタリガニの仲間は、昼間は砂や泥に身を潜めているので、身を潜めやすい地形の変化がある砂地(砂泥)底のポイントを狙ってみたい。港内なら、堤防の先端付近の流れが変わりやすい場所や堤防の陰、ミオ筋のカケアガリ部分などだ。
また、カニは巻貝、二枚貝、ゴカイなどの環形動物、小さな甲殻類などを捕食しているので、これらが豊富な場所が狙い目。また、漁港などでは魚のアラが捨てられる場所や排水口付近も1級ポイントとなる。

【時間帯と天候】
カニは上げ潮に乗って岸に寄ってくるので、堤防から釣る場合は満潮前後がチャンスだ。
昼夜関係なく釣れるが、カニの活性が上がる夜のほうが数は狙える。ただし、水面を泳ぐようになると、カニ網には掛かりづらくなってしまう。また、晴れよりも曇りの日のほうが釣れやすい。
●実際のテクニック

港内では遠投の必要はないので、まずは軽く投げて近場から探っていく。キャスト時は、周囲に人がいないことを確認し、竿全体に重さを乗せながら斜め上方向に投げよう。
オモリが着底したら余分のイトフケを巻き取り、カケアガリなどのポイントに網を運ぶ。仕掛けの近くにカニがいればエサの匂いですぐに寄ってくるので、投入後10分間も置いておけば十分。最初は様子を見るために15分ほど置いて、カニが釣れれば回収する間隔を短くしていけばいい。15分ほど待っても釣れなければ、その場所は見込みがないのでどんどん移動しよう。

カニが網に掛かっても、通常の釣りのように竿先にアタリが出ることは少ない。このため、定期的に仕掛けを回収してカニが釣れているかどうかを確認するとよい。回収時には、まず大きくゆっくりとアワセを入れる。これは、エサに寄ってきて網の上や網の近くにいるカニを確実に網に引っ掛けるため。うまくカニが掛かっても、体の一部が引っ掛かっているだけの場合も多いので、巻き上げる際はポンピングせずに一定の速度で巻き上げるのがコツだ。
釣れたカニは、鮮度を落とさないように活かしたまま持ち帰る工夫が大切。海水を満たしたバケツにカニを入れておくと、すぐに酸欠で死んでしまうのでエアポンプが必要だ。あるいは、バケツにカニの腹が浸かる程度の海水を入れておくと、水面スレスレで呼吸するため、数時間は活かしておくことができる。数が多い場合は氷で冷やした海水で活き締めして、クーラーボックスで持ち帰ろう。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)