◆タナゴ、モツゴ
冬の水辺は寒さも身に染みるが、ポカポカ陽気の日なら案外と暖かく釣りを楽しむことができる。とくに、ここで紹介する淡水小物釣りは身近な場所で楽しめ、初心者でも気軽にチャレンジできるので、近年では人気急上昇中だ!
タナゴ釣り

- 分 類-
- 学 名-
- 英 名-
- 別 名-
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
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●冬の淡水小物釣りの魅力
淡水小物というのは、平野部を流れる小河川や田んぼの用水路などに生息する「タナゴ」や「モツゴ」といった小魚たちの総称。タナゴは観賞魚としても人気なのでご存じの方が多いと思うが、モツゴは関東ではクチボソなどと呼ばれて、タナゴ釣りの典型的な外道(対象以外の雑魚のこと)とされていた。
ところが、近年の淡水小物釣りブームのおかげで、モツゴも都市近郊で手軽に釣れるターゲットして脚光を浴びているのだ。実際、休日の多摩川や手賀沼などに出かけてみると、モツゴ相手に釣りを楽しむ家族連れやカップルの姿が多く見られる。今後は、都会の子供たちが釣りを覚えていくのにも、モツゴが恰好の対象魚になりそうだ。
●淡水小物釣りの主な対象魚

【モツゴ(クチボソ)】
全国各地の河川や湖沼に生息するコイ科の小魚。体長は約5〜8センチ、最大で12センチほど。体型は細長く、口が小さい。体側に一本の黒い縦縞があるのが特徴だ。

【タナゴ】
ひとくちにタナゴと言っても、日本にはさまざまな種類がいる。写真はタイリクバラタナゴと呼ばれる種類で、もともとは中国や朝鮮半島などに生息していた外来魚だ。現在では全国各地に生息しており、タナゴ釣りの代表的なターゲットになっている。ほかに、ヤリタナゴやタナゴ、カネヒラ、アブラボテなどがいる。
●淡水小物釣りが楽しめる場所

淡水小物は、全国各地の平野部の小河川や沼に生息している。とくにモツゴは、あらゆる水域に入り込んでいるのでビギナーでも比較的簡単に釣ることができるだろう。なかでも、写真のような田んぼの用水路は、釣れる場所を絞りやすいので狙い目だ。シーズン的には真冬を含めて、ほぼ一年中楽しむことができる。
●淡水小物釣りの道具

【竿】
釣具店で「淡水小物用」として売られている竿(ノベ竿)を選べば良い。用水路などがメインの釣り場なら、竿の長さは1〜1.5m程度が使いやすいだろう。ちなみに、一番右は自作の竿だ。

【計量カップ】
エサとなるグルテンを練るための容器。100円ショップでも売っている。

【観察ケース、または簡易水槽】
淡水小物釣りでは魚をリリース(逃がしてやること)するスタイルが基本だが、釣れた魚を観察するなら専用ケースや小型の水槽などを持参すると良い。
●市販の仕掛けを利用する

通常、タナゴのような口の小さな魚を釣るには、かなり繊細な仕掛けが必要になる。しかし、初心者がいきなりこうした仕掛けを作るのは困難だ。そこでオススメしたいのが、釣具店で売られている「完成仕掛け」の活用。これは、釣り糸にウキやオモリ、ハリなどのパーツをすべてセットして、現地ですぐに使えるようにした仕掛けだ。釣具店で「淡水小物仕掛け」、あるいは「タナゴ仕掛け」として売られているものを選べばいいだろう。完成仕掛けには予備のハリがセットされている場合が多いが、さらにタナゴ用のハリを1ケース購入しておけばバッチリだ。

【仕掛けのセット方法】
仕掛けを竿にセットするときは、竿を伸ばしてから竿先にある「リリアン」と呼ばれるヒモ状のパーツに、仕掛けの釣り糸の上部を結べば良い。結び方はいろいろあるが、「チチワ結び」という方法が確実だ。なお、チチワを作るときは、竿の長さと仕掛け全体の長さが同じになるように調整しておこう。
●エサは「グルテン」で決まり!

小物釣り用のエサにはいろいろな種類がある。春〜秋はアカムシやサシと呼ばれる虫エサの食いが良いが、冬の小物釣りにはヘラブナ釣り用の「グルテン」と呼ばれる練りエサがオススメ。小分けして内袋に入っているタイプなら無駄なく使えて便利だ。

【グルテンエサの作り方】
グルテンは粉末状になっているので、小さな容器にあけてパッケージに記載している分量の水を投入し、軽くかき混ぜる。このとき、サラダオイルを数滴混ぜておくと手にべとつかず扱いやすいエサになる。これを数分放置すると固まってくるので、さらによく練ってビー玉〜ピンポン球ほどの大きさに丸めて完成。
【エサをハリに付ける方法】


グルテンの表面に、ハリで引っ掛けるようにすれば簡単にエサ付けできる。大きさは米粒ほどでOK。きれいにまとめるのがベターだが、多少いびつでも構わない。それよりもむしろ、後述するようにマメにエサを付け替えながら釣ることが大切だ。
●釣れる場所は足で探す


淡水小物が釣れるポイントとしては、写真のような幅が1〜2m程度の水路で、魚が身を隠せる障害物のある場所が狙い目だ。また、水の出入りがある水門や給水塔まわりなども見逃せない。こうした場所を巡り歩きながら、魚の付き場を発見していくのも釣りの楽しみのひとつだ。
●ウキ下の調整

モツゴやタナゴは中層付近を泳いでいることが多いので、たとえば水深60センチの水路で釣る場合は、仕掛けのウキ下(ウキからエサまでの距離のこと)を30〜40センチぐらいにしてみよう。ウキ下を調整するときは、写真のようにウキゴムの部分を持ってスライドさせればよい。
●実際の釣り方

釣り場が決まったら、利き手で竿を持ち、その手の親指と人差指でさらにハリを持って、エサをていねいにハリ付けする。この仕掛けを静かに水面に落としこむと、オモリの重さで自然に仕掛けが水中に馴染んでいく。完成仕掛けなら、すでにウキとオモリのバランス調整がしてあるので、仕掛けがなじむとウキの頭が水面に少し顔を出した状態で安定するはずだ。
この状態でウキに何らかの変化(アタリ)が出るまで待つわけだが、グルテンには魚を寄せる効果があるので、数分ごとにエサを付け替えながら釣ることを心がけてみよう。ウキにアタリが出始めたら、魚がエサを食べやすいように少し小さめにハリに付ける工夫も有効だ。
●魚信(アタリ)とアワセの方法

魚がエサをくわえると、ウキが水中へスーッと引きこまれたり、水面でピョコピョコ浮き沈みしたりとさまざまな変化を見せる。このウキの動きが「アタリ」というもので、魚の種類によって、あるいは季節やその日の状況によって違うパターンとなって表れる。しかし、最初は難しく考える必要はなく、ウキに何らかの変化があったら、とりあえず竿を軽く立ててみよう。この竿を立てる動作を「アワセ」と呼び、うまくタイミングが合えば魚の口にハリを掛けることができる。最初は空振りになることも多いが、何度か繰り返していくうちにうまくハリ掛かりしてくれるだろう。
魚がハリ掛かりしたら、そのまま竿を静かに持ち上げていくと魚が水面に出るので、その流れで竿を持つ反対の手で魚か仕掛けの一部をキャッチする。釣れた魚は、ケースや簡易水槽などで観察してみると、子供は大喜び。状況が許せば、持ち帰って水槽で飼ってみるのもいいだろう。
●アタリを出していくための工夫

【ウキ下の調整】
通常の場合、釣り始めてから10分以内にアタリが出ることが多いが、アタリがなかなか出ない場合は、そこに魚がいないことも考えられる。そんなときは場所を移動するのも方法だが、その前にウキ下を調整することを試してみたい。たとえば、天候や水温などの状況によって魚が底層を泳いでいる場合、ウキ下を長くした途端にアタリが出始めることも多いのだ。逆に、魚が上層を泳いでいるケースもあるので、適宜、ウキ下を調整してみよう。

【誘いを入れる】
小魚を含めて多くの魚は、動くエサに興味を示す。そこで試してみたいのが、エサを動かす「誘い」だ。その方法は、竿先でゆっくりと仕掛けを動かすだけでよい。大切なのは、仕掛けを数センチ動かしたら、魚にエサを食わすために誘いを止めること。この誘いを5〜10秒おきに入れることで、魚の食い気を促すことができるのだ。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)